第27話 朝のホームルーム
「よーし。みんな席に着いたなー。じゃあ、朝のホームルームを始めるぞー」
先生がいつもと何ら変わらないトーンでそう言った。
私たち生徒もそれに応えるように、いつも通りの話を聞く姿勢を保つ。
「では、ここで皆さんに質問です。私は今から何についての話をするでしょう、か」
先生の唐突な問いに、教室内の空気が変わったのを感じる。
「ということで、今から一〇秒時間を取るので各々で考えてみてくださーい」
ここで、先生のテンションがいつもと違うことに私は気づいた。クラスの皆もそれを感じ取ったのだろう。
けれどその受け取り方はそれぞれ違うらしく、姿勢を崩す者もいれば、逆に姿勢を更に固くする者もいる。私を含めて大半が姿勢を崩し始めたけれど……。
そこで、ピッ! という高い音が私の耳に届いた。それに少し驚き、その音が聞こえてきた黒板のほうに顔を向ける。
「十、九、八、七――」
先生がカウントダウンをはじめ、それと同じように黒板にくっついているキッチンタイマーも、表示される数字を切り替えていく。
「……」
教室内には沈黙が流れ、声を発する者は誰もいない。
「二、一、終了ー」
先生が終了の合図を出すと、教室内は一気に騒がしくなり始める。私が教室内に耳を傾けると、その大半は先生の今行っている謎の行動に対するものであった。
「じゃあ、
「私っ!?」
突然の名指しに、少し大きな声を出してしまった。
先生が一度首を縦に振る。
「えっとー……」
そう言っている間にも、数多の視線が私のほうに向いているのを感じる。
「頑張れー!」
「そんなに考えなくていいぞー。これは私の気分でやってることだから、成績にも入らないしなー」
私の返答が少し遅かったからか、先生が私に向かってそう一声かけてきた。
やばいよー、頭の中がどんどん真っ白になっていく。
「ボールの球技、のことですか……?」
私は完全に頭が真っ白になるまえに、頭の中に浮かんできた単語でどうにか言葉を紡いだ。
「……うん、そうだな。正解だ」
先生は一瞬の間を置いたあとに、そう述べた。
なんで間があったのだろう、と私が疑問に思っていると――
「……ボールっ……の球技っ……ってなんですの……オホッ」
奇妙な笑い声を上げている誰かの声が私の耳に届く。
それは私だけではなく、皆も同じだったのだろう。数多もの私に向けられていた視線が、私から外れていくのを感じた。
「……」
私もみんなと同様に、すぐにその奇妙な笑い声を上げていると思われる人物のほうに目を向ける。
「オホッ……オホッ……オ――こ、こほんっ。失礼いたしました……続けてください」
姫川さんって普段はとても上品で落ち着いているイメージがあったけどちゃんと笑う人なんだ、と謎の感心をする。
それと女子の私でも、落ち着いた声音とは打って変わって頬が赤くなっている姫川さんの顔とその反応がすごく可愛いと思った。
「じゃあ、今から球技大会の種目がいくつか決定したから、それを発表したいと思う」
そう言いながら、先生はチョークを手に持ち黒板にそれを書き始める。
すると、またしても教室内が騒がしくなり始める。
それにしても、いくつかってことはやる球技は一つじゃないってことかな?
そんなことを考えていると、私の机がトントンッ! と軽く叩かれた。
「ん、なに?」と私はその主である悠斗くんのほうに顔を向ける。
「球技って一つだけやるわけじゃないんだね」
どうやら
なおも悠斗くんは続ける。
「
悠斗くんが黒板に目を向けてそう言ったので、私も彼に倣って黒板に目を向ける。
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