第22話 決戦投票
「最後に残ったのは、ドッジボールとバスケットボールになります。これらの二つは同票になったので──決選投票というような形で、今からどちらかに手を挙げていただきます」
すると、一人の男子が声を上げる。
「『決選投票』ってなんすかー?」
「決選投票というのは、一度では決まらなかったものを再び投票を取って決めることよ」
と、姫川さんに質問したクラスメイトが「あー、そゆことかー」なんて言ったあとに、彼女にお礼を述べる。
「あざす!」
「問題ないわよ。でも、次からは手を挙げてから自分の意見を言ってもらえると助かるわ」
「うっす」
と、姫川さんが小さく息を吐いた。
「どちらに投票するか決まっていない人はいるかしら?」
その姫川さんの問いに返事をするものはいない。
「では。皆さんどちらに投票するか決まっているようなので、今から言う『ドッジボール』または『バスケットボール』のどちらか片方に手を挙げてください」
姫川さんはなおも言葉を続ける。
「バスケットボールを希望の人は手を挙げてください」
すると、多くの人が一斉に手を上に挙げた。
「まだ手を下ろさないでちょうだい。今、数えているところだから」
ちなみに、私は『ドッジボール』のほうに手を挙げようと思っているから、今私の手は挙がっていない。
「数え終わったので、手を下に下ろしてください」
そして、黒板には姫川さんのきれいな字で『14』という数字が書かれた。
「もう決まったも同然ではありますが、一応『ドッジボール』を希望する人、手を挙げてください」
その姫川さんの言葉のあとに、先ほどとほぼ同じ数と思われる手が上に挙がった。
「やはり、『17』ですね。休みの人もいるにはいますが、見たところ二人休みなだけなのでどちらもバスケットボールを希望したところでドッジボールのほうが優勢なのは変わらないわね」
姫川さんがそこで一度先生のほうに振り向く。すると、先生は腕を組みながら軽く頷いた。
「とのことなので──今回、ワタクシたちのクラスは『ドッジボール』を希望として提出いたします。それでよろしければ、拍手をお願いします」
その言葉のあとすぐに、教室内は拍手の音で埋め尽くされた。
※※
「
学校の帰り道、私が沙也加にそう尋ねると彼女は顔をしかめさせた。
「それがさ〜、あたしはサッカーやりたいって何回もみんなに聞こえるように言ってやったのに男子の大半が『野球』やりたいって言いやがってさー」
「沙也加、口調!」
「あ、やべ」
沙也加がそう言いながら、口元を急いで抑えた。
「もう遅いからね? それで、最終的には野球になったの?」
「そう、そゆことなんだよー」
「あっ! いたー! みや……」
私が声のしたほうに振り向くと、その先にいたのは
「あ、ううん。何もない……」
咲島のその返事を聞いて私は一瞬疑問に思ったけど、すぐにその理由に気がついた。
「あたしのことは全然気にしなくても大丈夫だぜ!」
隣にいる
「あ、いや──大丈夫です! また今度にしますんでー。じゃあ
「う、うん! また明日!」
そして、咲島は何故か私たちが来た道を逆走していった。
「遥、よかったな」
そのしみじみとしている声音に私は少し驚いたあとに、沙也加に精一杯の感謝の気持ちを込めながら──
「これも全部、あの時沙也加が私を救ってくれたおかげだよ」
「まあ、あたしもその自覚はあるけどな〜!」
ふざけるようにそう言った沙也加の照れ隠しに、私はすぐに気がついた。
すると、沙也加が「じゃあ、目隠しでもしなきゃな!」と意味のわからないことを言ってきた。
その瞬間、私の頭の中はいくつものクエスチョンマークで埋め尽くされた。
※※
「沙也加ー、目が塞がれてるだけでこんなに人って恐怖に怯えなくちゃならないんだねー」
すると、沙也加が私の両耳に入っているイヤホンをスポッと抜いてくれた。
「ごめんなー、もうちょっとで着くからさ」
私は今、何故か沙也加に目隠しをされ、彼女に手を引かれるがままどこかもわからない土地を歩かされている。
「わかった。すごく怖いけど頑張るよ!」
それにしても、私にサプライズってなんだろう……?
なんか外からは、ゲームセンターの音とか雑音がすごく聞こえてくるんだけど──
「そのサプライズって、かなり期待してもいいんだよね?」
「おう! いくら期待されてもあたしはその遥の期待を超えられる自信しかないぞ!」
それから再び両耳にイヤホンを入れられてしばらく歩いたところで、沙也加が再び私のイヤホンを片耳だけ外してくれた。
「よし、着いたぞ! ただ、ここからはエレベーターに乗って上に行くからそしたら目隠しを外すぜ」
「わかったー」
エレベーターで上に? ──ってことは、何かしら建物の上の階にあるもの……えっ、なんだろう? 全然わかんない。
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