飛び火
「それで豊胸の実についてだが、どうやら高等部の方まで話は広がったらしい」
え、とだけ僕の口から声が漏れた。
「姉や兄など家族が高等部に通っているクラスメイトが居たようでね」
痴女先輩が言うに、放課中に中学を抜け出して高等部に行った猛者が居たそうだ。
「あちらはダンジョンに潜れる資格を得ている学生が居る」
「あー」
話を持っていけば手に入るのではと期待した者が居たのだろう。ただ、原作知識のある僕からすると厳しいと言わざるを得ない。
そもそも能力値を上昇させる果実はダンジョンに出没する猿もしくは樹木の魔物の内でもレアエネミーと言われる希少個体が倒した時に落としてゆく品なのだ。かつ果実の種類はランダム。
「竹痴君?」
「あ、なんでもありません」
豊胸の実を廻るイベント期間中だけ豊胸の実の出現率が増加する仕様だったなんてことを思い出したが、イベント自体消失してしまった今、たいして意味はないと思う。ただ、豊胸の実の情報がもうこの段階で高等部にまで出回ったのは予想外ではあった。
「しかし、中には授業をサボってどうにかダンジョンに潜れないかと試みようとする先輩も出かねないと」
「割と大問題じゃないですか。けど、どこでどうやって手に入るのかは未解明なんですよね、あの果実?」
一応僕だけは入手方法を知っているわけだが、情報の出どころを言えないこともあって流石にそこまでは明かすつもりもない。
「あぁ。私も店に置いてあったのを購入しただけだしな。もしあの時どんな果実か知っていれば、どんな人物が売りに来たのか尋ねていたかもしれないが」
「お店にも守秘義務があるでしょうから無理なのでは?」
むしろ現役の探索者に尋ねた方が可能性は高いと思いますよ、とも僕は痴女先輩に言った。
「先方に心当たりがあった上で話してくれるつもりがあったならですし、中にはデタラメ話して金銭だけ巻き上げるようなタチの悪い詐欺師もいるかもですから、その辺も気をつけないといけなそうですけれど」
自称探索者の詐欺師と言うのもダンジョンのある国には存在する。だからこそ僕は釘を刺し。
「あ、拙い。僕、そろそろ戻りますね」
時計を見て思ったより時間が経っていたことに気づくと慌てて痴女先輩の教室を後にした。
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