昼放課の始まり


「昼放課って言い方、今じゃ伝わらないんだっけ?」


 前世でそんな年代ギャップ的なモノがあったようななかったようなとうろ覚えのどうでもいいことをつい、考える。じりじりと痴女先輩と落ち合う時を待ちつつ四時間目の授業を受けているさなかに。


「早く昼になんねぇかな」


 僕とはおそらく別の理由で授業の終わりを待ち望む声がどこかから聞こえた。昼食の時間でもあることを鑑みれば、空腹からとかが一番健全な昼放課の待ち望み方なのかもしれない。前世今世ともに僕にも覚えがあるものでもあるし。

 それから僕は黒板の内容を写しながら時折教室の壁にかけられた時計を見つつ過ごして。


「ん? もう時間か。今日はここまでとする。来週は――」


 厳密に言うならもう一分と少しは授業時間が残っていたが、僕を含む授業を受けた生徒が黒板を写し終えるのにかかる時間を鑑みれば、許容範囲内と言ったところで科目を担当する教師は宣言と予告をしつつ教卓の上の教材を纏め始めた。


「ふぅ」


 いつもと同じ授業の筈が、いつもよりずっと長く感じた気がする。とりあえず痴女先輩と合流しようと声には出さずに決め、教師が出てゆくであろう教室の出入り口とは別のもう一方を確認する。


「あ」


 気の早いクラスメイトが扉に手をかけていた。そのまま外へと行かないのは教師と鉢合わせを避ける為だろう。視線を教師が向かった出入り口の方に向ければそちらに近づこうとするクラスメイトの姿もある。おそらくは購買部に向かうんじゃないだろうか。


「そっか、購買か」


 ちなみにうちの中学には給食がない。弁当を持参する生徒も居れば購買部でパンやおにぎり、弁当を買う生徒もいる。僕はと言うと家政婦の作ってくれた弁当を持参していて、忘れぬように鞄の中から弁当を取り出す。


「さて」


 飲み物は校内に点在する自販機でお茶でも買えばいい。流石にあんな噂が広まってるかもしれない教室でのんびり弁当を食べる気にはなれない。その弁当に関しても痴女先輩と落ち合ってから食べてもいい訳であるし。

 僕の独言から始まったデマに関しては出来るだけ早めに手を打っておきたい。


「うん」


 教室を出ようと席を立つ間でもなく、視線を感じた。僕が弁当持参派であることは知っているクラスメイトも居る筈だ。それでも飲み物を買いに自販機まで行くことはあるのでこの時間に外に出るのは不自然ではないのだが、朝のおはようおっぱいに全力でツッコんでしまったことと言い、気づかぬ間に聞かれ拡散されていたフシのある独り言と言い、見られる心当たりには事欠かない。


「……と言うことがありまして」


 それらが積もり積もって心労となっていたんだと思う。ある程度尾行はされないよう迂回までしてやってきた痴女先輩との落合場所で、挨拶もそこそこに僕が口にしたのは、朝から今に至るまでの経緯だった。


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 痴女先輩の様子を描写をするとこまで行けなかった、無念。

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