朝のアイサツ

「はぁ」


 自分の教室が近づいてくるとどうしても緊張するし、落ち着かなくなる。校門から昇降口までの光景が再現されるんだろうなぁと心の中でどことなく思っていても。


「……考えることは皆同じとまで行かなくともなぁ」


 同級生も同校の生徒の一部なのだから似通った反応が帰って来ても不思議はない。それは面識がほぼなかったり全くない人物と比べれば同級生は接点も多いし距離も近くはある。それもそうなのだが。


「はぁ」


 どうにも楽観視できなくてため息と独り言がつい増えてしまう。心労を強いる悩み事の内容が誰にも打ち明けられないものな為だろうか。健全とは程遠いとは自分でお思うけれど。


「病んだりしないよなぁ」


 自分で呟きながら否定しきれないのって拙いんじゃないかと思いはするが、今はそんなことを考えてる場合でもない。こうして思考が脱線する間も足は動いて、教室へは近づいているのだ。

 扉一枚越し。廊下を歩けば別の教室内の声もいくらか漏れてくる。


「……竹ノ内が……って」


 わかってはいたことでもその断片から自分の名字を拾ってしまうと、ついため息が漏れそうになる。他のクラスでの話題にまでなってるのかと。

 これはもう僕のクラスでも似たようなモノだろう。そして、会話の途中に僕が入って来て空気が凍る訳だ。なんだかテンプレって言って過言でないくらいにどこかで見た流れだけれども。


「よし」


 なんだかこのまま踵を返して自主休校したい気持ちを押し殺し、手の平を打ち鳴らして気持ちを切り替える。


「ここは、主導権を握ろう」


 大きな声であいさつしつつ、教室に踏み込むんだ。自分のペースに相手を引き込んで有無を言わせず色々うやむやにする。

 そうだ、マシンガンの様に一方的にこっちが話してしまうのはどうか。


「色々あったけど話してはいけないって言われてることも多くてさ、ごめんね」


 その上で、話すのはNGとされてることもあると予防線を張っておけば、無遠慮に答えにくい質問をブッ込んでくる輩も減るのではないか。


「いける」


 これでいこうと僕は心に決めて、たどり着いた教室の前、扉に手をかけ、息を吸い込む。


「おはよう!」


 開けると同時に挨拶、OK。


「「おはようおっぱい!」」


 返ってくるいくつもの声。


「って、なんで流行ってんだぁぁぁぁ!?」


 我を忘れ、僕は反射的に叫んだ。


「「あっ」」

「あ」


 そして教室の空気が死んだのだった。


************************************************************

 どういうことなの?


 あ、おはようなので今回は公開時間を朝の時間帯にしてます。(それ以外に深い意味はない)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る