幕間『外側から見た僕たち』

番外1・生徒会室にて


「少し相談にのって貰っていいだろうか?」


 唐突な申し出に困惑したのもきっと仕方ないと思う。生徒会室に千代会長とアタシしか居ないのはまぁ、そういうこともある。

 行動力があることも解ってる会長だから、唐突に何か言いだすことだって「まぁ、よくあることだよね」で流せる。

 というか、微妙に不本意だけど慣れちゃったところもある、だけど。


「会長ってこんな頼りなさそうな表情出来るんだっけ?」


 ちょっと失礼かもしれないが、そう思ってしまった。いつも自信ありげなウチの生徒会の生徒会長が、こんな表情をしてるのをアタシが見るのは初めてだった。


「そうか、ありがとう」


 無意識のうちに頷いてでも居たのだろうか。アタシが言葉を失っていると先輩はポツリポツリと語り始め――。


「とっ、『殿方の意識を引き留める』ゥ?!」


 語り始めて、じゃなかった。なんだ、これは。この生徒会長、悪の秘密組織が作り上げた偽物かナニカだろうか。

 そう言えばダンジョンを世界から排斥しようという過激団体が日本にもあるって聞くし。


「あ、こ、声が大きい」

「声が大きい、じゃないです! 誰ですか、アナタ!!」


 アタシの上げた声にビクッと肩を跳ねさせたかと思えば落ち着かない様子で周囲を見回しあたふたし始めたのを見て、確信した。


「コイツは偽物に違いない」


 と。生徒会長はいつも自信に満ち溢れ、文武両道。容姿にもスタイルにも優れていて、密かにファンクラブがあるとかないとかそんな噂すら存在するのだ。

 反面、色恋沙汰だとか浮いた話一つなく、だからこそアタシにとっても今聞いたのは青天の霹靂。


「誰と言われても……私は私だが」

「その私がアタシの知ってる生徒会長じゃないからこんなこと言ってるんです! というか、偽物ならもっとマシなことを言いなさいよ! それで会長になりおおせると思ってるんですか!!」


 これがまだ「殿方に言い寄られて困っている」なら少しぐらいは騙されたかもしれない。


「最近お一人で遅くまで残って生徒会のお仕事されてますし、その苦労を鑑みれば相談の一つや二つ……とは思ってましたが」

「あ、いや、その、だな」


 アタシの言にウチの生徒会長にはあり得ない煮え切らない態度で視線を彷徨わせれば、確信がゆるぎないモノに変わる。


「正体を見せなさい、このニセ会長!」

「待、あっ」

「やかましい! なんの騒――」


 正義のためにアタシがとびかかった直後、ドアが開いて顔を見せたのは、生徒会副会長。


「……沢井会計、そういう変態的なことは相手の同意を得た上で生徒会室以外でやり給え」

「へ? あ、違」


 後で考えれば副会長も混乱してたんだと思う。けど、アタシの右手がニセ生徒会長のおっぱいを鷲掴みにしていて、それを見られた事実だけはもう変えられなくて。


「何でこうなるのよぉぉぉぉおお!」


 そう絶叫せずに済んだのは、そもそも物音と声が原因で副会長が現れたことを頭のどこかが理解していたからかもしれない。


 尚、諸々の誤解を解くのには一か月と生徒会長の協力が必要だった。


********************************************************************

 という訳で、他者視点(生徒会の会計)第一弾でした。


 このお話からも分かる通り、変態先輩は外面が良く放課後のアレは生徒会の居残り仕事のついででやっておりました。


 尚、今話は次章用意の為に明日の10:00分の前倒し公開となります。


 代わりに明日の更新は多分ありませんのでご了承ください。

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