事案
「高校卒業までは待って欲しかったんだがな、竹痴君」
そう言いながらも先輩ははちきれんがばかりに膨らんだ自分のお腹を撫でた。その上には前にもまして大きくなったおっぱいがのっていて、身じろぎすると、先輩はおっと声を漏らす。
「動いたぞ、いや、これは蹴ったのか……話には聞いていたが」
ほうほうと興味深そうに自分のお腹を見やる先輩に、僕はそう言えばどこかの小説で見たよな、似たようなシチュとのんきに考え。
いや、のんきに考えたふりをして現実逃避したのだ。
「私はともかく竹痴君は年齢も足りないし、結婚はキミが結婚出来るようになったら、としよう。もともと結婚するつもりはあったのだから、そこは予定通りである訳だし」
動じない、欠片も動じずに先輩はそう言って。
「うっわぁぁぁぁ?! あ?」
叫んだ自分の声で我に返る。そこは屋上に出るドアの前。
「あっちゃあ、寝ちゃってたのか……」
考え事をしているうちに寝てしまったようだ。が、なんて夢を見るんだ、本当に。
「いや、まぁ、あの関係が続けば、そうなんだけど」
いずれ痴女先輩とゴールインすることにはなるとは思った。だが、先輩が高校在学中に妊娠はあり得ない。
「何考えてるんだろう、僕は」
いくら相手が痴女先輩だからってあり得ない。現状先輩とアレしてる時間は集中を途切れさせずに瞑想できているのだ、ただ。
「……今日の放課後」
痴女先輩と無茶苦茶顔を合わせづらくなったのは事実だ。
「とはいえなぁ」
先輩を放り出して無断で一人帰る訳にもいかない。
「こう、なんやかんやで――」
なんやかんやで先輩の直揉み提案に自分でも気づかないところで動揺したりしていたのだろうか。不安に思っていたのだろうか、欲望に流されるのではと。
「いやいやいや、考え過ぎ、考え過ぎだって!」
相手はあの痴女先輩だ。いくら見た目は美少女でもあの言動ならまかり間違ったとしてもすぐ正気に返れるだろう。
「事案展開なんてない、事案展開なんてない」
呪文のように繰り返して自分に言い聞かせつつ僕はその場を後にする。いくら誰も来そうにないと言っても、大声を上げてしまったのだ。見に来る奴がいてもおかしくはなかったのだから。
尚、後日怪談の一つになっていて頭を抱えたのはここだけの話にしたい。
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