★ソシャゲでよく見る、アレ<高校編からの回想>
『サブダンジョン』
そう呼ばれるものが、一定の期間だけダンジョンに生えるというのは、高校の授業で習うところだ。もちろんダンジョン探索者を育成する科の方で、という但し書きはつくけれど。
「『腐敗と死のサブダンジョン』、やっぱり今日もガラガラだなぁ」
出てくるのはアンデッド、ゾンビなどの動く腐乱死体がほとんどであり、見た目がえぐい敵ばかりな上にえげつない腐敗臭を漂わせているのだ。不人気な理由はもうお察しである。
ただ、このダンジョンは原作知識もちにとってはかなりありがたいダンジョンでもあった。
メインダンジョンは異世界に渡るためのチュートリアルの側面があるので出てくるモンスターのバリエーションも多彩、汎用性が求められることも多いが、特定の要素のみで固まったサブダンジョンは敵が共通の弱点を持っていたりするので対策をしていると攻略がメインより楽なのだ。
「加えて、このダンジョン。敵の動きが鈍い上に総じて火に弱いから『遠距離から火の属性で攻撃できる』と序盤は一方的に敵を倒していけるわけで」
中学時代から瞑想で魔法の威力やら何やらを底上げし、射程を伸ばせる杖を持つ僕にとってこのサブダンジョンの上層は楽に敵を倒せる狩場でしかなかった。
「本来特定素材を集めたい人の為にダンジョン作成者に交渉して作ってもらったのがこのサブダンジョンの成り立ちなんだっけ」
そういうバックストーリーはあるものの、原作だと存在する理由はソシャゲでよく見かけるボーナス系ダンジョンと変わらない。特定素材を集める為の周回と言う苦行でプレイヤーにストレスを貯めこませないための救済措置だ。
「だから、コレは想定外だったんだろうなぁ、公式も」
呟きつつも危なげなくゾンビだのグールだのを燃やし倒しつつ進んだ先で僕はとある通路に並んだ柱の一つにある出っ張りを押し込む。
ゴゴゴと音を立てて壁が開けば、その先には隠された通路が秘されし財宝のもとまで続いている。もっとも、そのお宝はどうでもよく。
「おー、今日もお目当ての方だ」
先に進むと見えてきたのは下から吹き抜けになった回廊。壁に沿って設けられたこの回廊の下はこのサブダンジョンの下層上部であり、けた外れに強いモンスターの姿を見ることができるのだが。
「ファイア、アローッ!」
それだけでない、射程を延長する杖を持ち、射程の長い攻撃魔法を使える者なら状況によって一番近いモンスターに攻撃することができるのだ。
「いや、相手がゾンビで良かったなぁ」
知能が低く、遠距離攻撃を有さないタイプなら一方的に攻撃できるのだ、これが。
「もちろんダメージは雀の涙だから長期戦は必須だけど」
それも少し前の話。僕はここに来るのが初めてではなく数体ほどその下層の敵を倒し強くなっていた。
「原作だと三年生の一学期の学生の平均的なステータスよりはもう上なはずだけど」
ダンジョン探索の許された二学期を迎えて二か月の一年生がもつ強さではない気がするが、それはそれ。
「なんだかんだ言って先輩との時間が大きかったのは事実だよなぁ」
あの瞑想がなければきっとここまでには至れてなかったハズだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます