説得


「とにかく! 揉むならご自分のものにしてください、セクハラですよ」


 我に返った僕は成人向け先輩を窘めた。先輩のおっぱいから成長の機会を奪うのが残念だったとかではない、原作ブレイクもアレだからだ。


「むぅ、それを言われると弱いのだが……」

「弱いも何もないです」


 断固退けないところだった。そもそもこの先輩、生徒会の役員であるし、原作でも主人公を含むメインの登場人物と結構絡んで来るキャラではあった。

 先輩のおっぱいが原作より小さかったから物語の進行に支障があったなんてことになったら、原作知識が生かせなくなって僕としても拙い。


「そもそもセクハラって言うのもさっきが初めてじゃないですよね?」

「ぐっ、な、なら交換条件としようじゃないか。『私はキミのおっぱいと二の腕を揉む』かわりに『キミは私のおっぱいを揉む』これでどうだ?」

「はい?」


 この場合、どうしてそうなるんですかとツッコミを続けるべきだったのだろうか。


「うぐっ、そう簡単に釣られないか……」


 だが、僕が聞き返したのをこの痴女先輩はどうとらえたのか。


「すまない、私が不誠実だった。『キミは私のおっぱいと二の腕を揉む』としよう。これなら条件は同じはずだ!」

「いや、そこが引っ掛かったわけではないんですけど?!」


 とは言うものの、僕も男だ。聞き返した時に謎の葛藤を覚えたことを否定しては嘘になる。先輩が自分で揉まなかった胸の成長分をこちらで補えば差は埋められるし、僕が揉むことで他人にもまれるのは嫌なモノだと先輩が気づいたなら、先輩のセクハラも終わるかもしれない訳だし。


「だいたい、この状況、人に見られたらどうする気なんです?」

「責任取って婿に貰うが?」

「無駄に男前発言?!」


 いや、男前でいいんだろうか、コレ。


「未来の夫が相手ならいかがわしいことを陰でコソコソやっててもお目こぼしして貰えるだろうしな」

「ドヤ顔で言うこととは思えないんですが。というかいかがわしいことだとは思ってたんだ……」


 もうツッコミが追い付かなくなってるこの先輩であるが、原作では主人公とお付き合いするIFルートがあったりすることを思い出し、僕はそのルートに進んだ主人公にちょっとだけ同情を感じるのだった。

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