小悪党ノートと龍の秘宝
小悪党ノートと龍の秘宝 プロローグ
ここは冒険者の国、キルリア。
その北の山岳部にとある村があった。
その村の集会場に数人が集まり、何やら話し合いをしていた。
「どういうことだ!
一本のロウソクに火が灯るだけの薄暗い空間で、男が年配の男に詰め寄っている。
他の人間は何も言わずに見守っているが、全員が詰め寄った男と同じ気持ちだった。
「そのままの意味だ。何か文句があるのか?」
「当たり前だろう!? 通例では祭りはまだ先のはず! それをなぜ繰り上げて行うのだ!」
「それはあくまでも通例だ。開催の時期は本来村長が決める。故に、現在この村の長であるワシが決めるのは、何もおかしいことではあるまい?」
詰め寄られていた年配の男――村長は冷静に答える。
それでも男は納得がいかないのか、まだ詰め寄る。
「だが急すぎる! あの祭りはただの祭りじゃないだろう!?
「問題ない。諸々の手筈は整えてある。そしてあれの選定も終えているよ」
「な…………!?」
村長の言葉に男は絶句する。そして他の者たちも驚愕の表情を浮かべる。
「だ、誰になるのですか?」
「……ふふ、それは明日の村民会議で発表しよう。それまでは秘密じゃ」
「何!? 俺たちにもか!」
「村長、少なくとも私の役職は『村長補佐』。そしてこの場にいる全員は、あなたと共にいろいろと清濁合わせ飲んできたではないですか? それなのに、なぜ我々にも秘密にするのですか?」
「ふっ……」
村長補佐の言葉を聞いても村長は鼻で笑うだけだった。
真意は告げず、ただ語る。
「これもおかしなことではない。選定結果は神から村長へ告げられる神聖なものだ。それを告げるのは村人全員が揃った時。何も問題なかろう?」
「だが――」
「それに……」
男の反論を跳ね除け、村長は憎々しげに周囲を見渡す。
「この中にワシを裏切った者がいるからな」
その言葉に全員が絶句し、お互いを見合わせる。
「どういうことだ?」「裏切り?」「何の話でしょうか?」
次々と疑問の声が口に出てどよめきが広がる。
「ワシは裏切り者を許さん。明日から祭の準備と……怯えながら過ごすがいい、裏切り者よ」
この村の名は『ブレア村』。またの名を――――
「裏切り者は
『龍に呪われた村』
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