第29話 直通
「・・・・・・どうですか?」
「待って。もう少し」
エルフは手のひらに魔法陣を構成し、目を閉じている。この地帯全域に溶け込んだ魔力から元となる術者の魔力を探し出すためだ。
この行為はある意味危険な状態になることでもあった。基本的に魔力感知をする場合、一度他の感覚はすべて断つ必要がある。つまりこの状態では彼はまともに戦闘ができない。
こんなときに魔物にでも襲われたらいい未来は待っていない。
ヒマリは周囲の様子を見張りながら、エルフを急かした。
「まだですか?」
「ん~」
「早くしないと」
「だいじょうぶ。あせらない、あせらない」
エルフはせっかちな少女を頬を緩めながらたしなめる。それを聞くと少女はぐっと口をつぐむ。
「・・・・・・」
「よしっ。場所が分かったよ」
「ふう。ようやくですね。ほんとに」
「怖かった?」
「あの、いちいち分かることをわざと聞かないでください」
「あ〜、ごめん」
と謝りながらエルフは目を開ける。そして中央部のひときわ高いビルを指さして言う。
「とりあえずあそこ。あそこに大きな魔力が集まってる」
エルフが指さす方向に視線を向け少女は頷く。
「なるほど。あそこですね。早く行きましょう」
「そうだね。ここには長くとどまり過ぎちゃったし」
「魔物が集まってくる前に早く移動したほうが安全です」
少女はすぐに歩き出し、恐れる様子も無くすすんで行く。この先に何が待っているかも分からないのに。
「そんなに急ぎ過ぎるとかえって危ないよ」
エルフは微笑いながら言う。少女がそれに振り向く。
「こんな時こそ、あなたが守ってくれるんですよね?」
「えっ」
「違いましたか?」
「・・・・・・随分と頼りにされるようになったもんだよ」
彼は両手を上げて降参する。ヒマリも都合の良い言い分だとは承知していた。だがどうやら今回ばかりは彼も観念せざるを得なかったようだ。
それほどこれから進む道は危難な道だということを示していた。
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