第28話 導く者
ザ ザザザー
ピッ ピピ
壁にがっちりと取り付けられた大型の液晶モニターが光る。暗い室内、電灯は点いていない。青白く光るモニターの光だけが薄暗くこの部屋を照らしている。
それを一人の女が凝視していた。
ビルの最上階だというのに女は外界からの目を断つように開閉式のパネルを窓に被せている。
モニターが映すものはある二人の姿。人間の少女とエルフ。その姿を眺めながら女は思う。
・・・・・・彼女らはまだ気付いていない、私の存在に。けれどいずれ気付く。そしてここへやって来る。
だから、今はただ。
「それを待つだけ」
と女は言い、モニターの光を消す。
鈍い機械音が鳴り、薄暗かった部屋は何も見えないほどの暗闇に包まれた。
◆◆◆
ギャアアア
獣の風貌をした魔物が咆哮する。それに対峙するエルフは飽き飽きしながら言った。
「またか・・・・・・。もうこれで何体目?」
それにヒマリは一歩下りながら答える。
「五体目です」
「まだここに来てそんなに経ってないと思うんだけど」
とエルフは言い、鋭い雷撃を魔物の胴に突き立てるように放つ。魔物は抵抗する間もなく背中から血を流して倒れる。
ヒマリは怯む素振りを見せずに周辺を見回す。
「明らかにここだけ魔物の数が異常ですよね。荒野には一体もいなかったし」
「罠ですよ〜って言ってるようなものだよ」
「私たちは罠と分かってて来ましたけどね」
「ははは。たしかにそうだ」
エルフは笑いをつくり、誤魔化す。二人は魔物の血溜まりを避けてさらに進む。
だが闇雲に進むだけでは強大な魔力をもった術者をこの広いビル群から探し出すことはできない。
格下の魔力では格上の魔力を感知することは容易ではないのだ。
「・・・・・・どうしたら、いいかなぁ」
「このままでは埒が明かない方向に流れてしまいますね」
「そうなった場合、こっちが大量の魔物に消耗されて終わる」
「せめて魔力を同格くらいまでに底上げできないですか?」
「無理」
エルフはあっさりと否定する。が、彼はその直後ピタリと足を止め、答えに続きをつけ加えた。
「・・・・・・僕だけだったら無理だけど、君が協力してくれるなら無理ではないよ」
「協力とは?」
ヒマリが聞くとエルフは手を伸ばし、答える。
「君の魔力を僕に流して」
「どうやって?」
「手を重ねて。その後は僕が君の魔力を少し貰うから」
と笑いながら説明する。そのエルフを前に少女は怪訝な顔になる。
「あれ? 手を重ねるのそんなに嫌?」
「いいえ」
「じゃあなんでそんな顔するの?」
「あなたが楽しそうな顔をしているので」
エルフはどういうことか、という顔をする。それに少女はふっとやわらかい表情で微笑してから彼の手に自身の手を重ねた。
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