第23話 疲れ

「はぁ、じゃあもう行きましょう。あなたの質問攻めにも疲れました」


「こんぐらい良いでしょ。それにまだまだ道は長そうだしね」


辺りを見回し、状況を再確認する。そうだ。まだこの荒野からは抜け出せる見込みがない。


「実際、少なくともここからは荒野の果ては見えない」


「そういうこと。どうせゆっくり歩くし、僕の厄介からは逃れられないよ」


「聞いても意味無いのに・・・・・・」


「無くても結構。僕にとっては意味がある」


エルフは頑なに肯定を繰り返す。


何の意味があるかは彼の心中を読み解かなければならない。が、それも厄介だろう。


「・・・・・・なら後どれくらいで再出発します?」


「九時間後」


「ながっ!?」


「だって、君寝てないよね。その分の疲労を負担してのは僕なんだから」


エルフは頬を膨らませて恨めしそうに言う。それに、どういう事かと少女は顔をしかめた。


「どういう意味ですか?」


「言ったまんまの意味」


「・・・・・・確かに最後に寝たのは、、、元の世界の宿、でしたっけ? そういえば今までやけに体が楽だったのは・・・・・・」


「魔法で君と僕の体のエネルギー消費を共有させてた」


「共有?」


「そう、共有。ま、一方的に僕の方にエネルギー消費を負担させるためだけどね」


彼は燃え損ねた小枝で地に絵を描きながら笑う。だが、勝手に知らないところで、理解不能な事をされていた少女からすれば笑い事ではない。


「そんな勝手なことしてたんですか? しかもいつから・・・・・・」


「最初に船で寝たときから」


「せめて伝えてからにしてください!」


「あのときはもう君寝ちゃってたし、後で伝えるのも忘れてた」


エルフは申し訳無さそうに両手を合わせ「ごめんね」と謝る。


「誠意があるんだか、ないんだか」


「あるよ。思い出して今君に言ったし、寝かす時間も取ろうとしてるんだから。満ち溢れてるよ」


なんとか成立する理由という理由をつらつらと並べる。ヒマリは口論を諦め、彼の口を閉ざすために寝る準備を始めた。


「・・・・・・私のことを考えてくれたのは伝わりました。そういうことならあなたの指示通りに寝たいと思います」


「・・・・・・! ようやく僕の思いやりが君に伝わってくれたんだ!」


「誠意は伝わってませんけど」


エルフの感動の言葉を横目に少女は敷布に横たわり蹲る。


瞼を下ろす。その瞬間、全身に重石を掛けられたような倦怠感が襲う。体に無理をさせていたことが如実に感じられる。


これまでの、徹夜の旅路を思い出しながら、徐々に眠りについた―――。

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