第22話 孤独で楽しい会話

突発的な事にエルフは質問の対価としてヒマリにあることを聞いた。


「それじゃあさ、君の世界についても聞かせてよ」


ヒマリは赤く燃える焚き火に小枝を焚べながら言った。


「あなたが満足するような話はないですけど」


「 別にいいって」


彼は目を輝かせながら肯定する。ヒマリも隠したいことではないのか、軽い口ずさみで話し出した。


元よりその世界にはいつ帰れるようになるかわからないのだ。一時であれば哀愁を漂わせる会話にも意味は出来るかもしれない。


「君は黒髪だよね。他のみんなはどうなの」


「すぐ近くなら黒髪だらけでしたけど。この世界には黒髪って少ないんでしたっけ?」


「いや、君しかいない気がする。物凄くレア、だよ」


エルフは髪を指差し、にっこり笑う。更に手を伸ばして、髪の毛に触ろうとする。


「ちょっと一本だけでもいいから、髪の毛くれない?」


「は?」


突然の不愉快極まりない発言に驚く間もなく、ヒマリは唖然とする。次第に表情を強張らせると、エルフは諦めたのか惜しそうに手を戻す。


「あれ、駄目だったかな」


「駄目も何も、気味が悪すぎません? 急にどうしたんですか」


「いや、君の体の一部を使って研究でもしようかなって思ってね」


「・・・・・・そういえばあなたはそんな人でしたね」


「そんな、ってひど過ぎるでしょ」


エルフは冗談混じりに泣き言を言う。ヒマリは軽い言葉を次々と無視しながら、「そうだった」と苦心しながら彼の実験話を思い返した。


「最初に会った時も紅いドラゴンの死体をあなたは収納してましたね」


「失礼だね。僕は別に実験が大好きってわけでもないのに」


「・・・・・・十分同じですよ」


エルフの言い回しにうんざりしたかのように、少女は首を落とした。


木がない荒野で片っ端からかき集めた焚き火のための小枝。最後の数本を炎の中へと投じる。エルフはその様子を見届け、また笑う。


「まだまだ話せるね〜」


「これで最後ですけど、まだ後数分は保つでしょうね」


彼は腕を背中から一直線にゆっくり伸ばしながら続けた。


「やっぱり座って休みながらの会話の方が楽しくて僕は好きだなぁ」


ヒマリは「それは大体の人が同意見ですよ」と返しながら、あることを思案する。


「・・・・・・であれば、こうして会話するのは一切やめにしても?」


ふざけながら、楽しそうに会話をする彼にとっては有効打になり得る行為だろう。


だが、まぁ、会話しないでこれから行動することもこの旅にとっては痛手だろうが。


エルフは無邪気な顔で否定した。


「僕は孤独なエルフだから、それは絶対に許さないよ〜」

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