第20話 理由
何事においても本気で物事に向き合おうとするとその分だけ精神に負担が掛かる。大切な家族、敬愛していた友、それらを失った彼もまた許容できない程の傷を負った。
まともな食事が摂れず、意識を保つこともままならない。行き場を失う無意味な体力はただひたすらに魔法学を脳にインプットするという狂気的な行動に費やす。
意思のない操り人形だと言われたこともあったくらいだ。
だからだろうか、思考しているように見えても、全てが上の空になっていった。
純黒の髪を持つ少女は悠長すぎるエルフに苦言を呈していた。仕様もないこと、だと悟ろうとも。
「で、さっき予想外の結果と言ってましたけどこれからどうするんですか? 情報があろうとも、ここに来たことはないんですよね?」
エルフは陽気に「そうだよ〜」と返すと、更に続ける。
「ま、今出口を探してるから」
エルフは魔法陣を荒野の乾き切った地面に貼り付ける。魔法陣の縁に膨大な文字が刻まれていっていた。
彼はこれでこちらの世界の地形情報や魔力色を大まかに測っているのだという。
だが、これはこの世界の文字が読めないヒマリにとってはなんのおもしろ味もないことだ。集めた情報すら理解することができない。
「これ見て思ったんですけど、文字も教えるリストに追加でお願いします」
「えぇ・・・・・・。やる事が次々と溜まってく・・・・・・。こんな予定無かったんだけどな」
「私はあなたの予定なんてものは把握してませんよ」
ヒマリの冷たい物言いに彼は「とほほ、、、」と落胆したように振る舞う。真意は勿論、真逆に違いないが。
エルフは一通り魔法による世界情報を汲み上げると文字が読めないヒマリに説明する。やはり世界自体の大きさはは元の世界・・・・・・所謂、表の世界と変わらないらしい。
面倒くさがりの彼は「元の世界に戻る出口となる場所以外の説明は省くね」と言い話した。
―――「・・・・・・つまりあの空に張られている膜は魔力の壁で、この世界のいずれかに元の世界とを繋ぐ管のような出口があるんですね?」
「そういうこと。魔力の壁は僕らじゃ無理矢理越えることはできないからね〜」
「確かに安全で確実な方が良いですしね」
「じゃ! 決まりってことで」
二人の意見はなんとかまとまり、行動を再開することになった。
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