第16話 裂目の兆し
「さあ!早く先へ進もう」
「仕方ないですね・・・・・・」
二人は洞窟の外へ出ようとする。
その時、天井の岩肌にピシッ、と音が鳴り亀裂が入った。
ビシ ビシシッ
二人は天井を見上げる。
「これもしかして、天井が崩れ落ちてくるなんてことあります?」
「もしかしなくても崩れそうだね」
崩れ落ちて道が塞がれてしまったら、いよいよ帰れない。少し急ぎ足になるも、亀裂は天井一帯に広がる。
バキバキ バキバキバキッ
「あ〜。まずいな、走ろうッ!」
エルフが振り返り叫ぶとヒマリは頷きを返し、出口に向かい走る。
バキッッッ ドドドッゴゴッ
天井の岩はあっという間に崩れ落ち、通った道はすっかり塞がれてしまう。
「あぶない〜。ギリギリ出られたけど、もうここは洞窟じゃなくなっちゃったね」
「でもどうして急に?」
「う〜ん」
エルフが唸っていると、崩れた洞窟の奥から人影がゆっくりと近づいてくる。影は次第に晴れ、姿があらわになっていく。
人・・・・・・、ではない。一つだけ身体の作りが異なっている部分があった。白い翼が背中にくっきりと生えているのが見て取れる。
上質な、格式が高そうな服で左肩の留め具から上半身と右足の殆どを覆う程のマントを羽織った女だ。
アメジストのように光る瞳は圧倒的な殺気と威圧感を放っている。
「竜人族・・・・・・。なんでこんなところにいる?」
エルフが小さく呟くと、隣に立っているヒマリは驚愕する。
「竜人!? 確かにあの見た目なら」
「うん。竜人には序列があるんだけど、アイツはかなり高そうな雰囲気がする」
推測らしい考えをしていると、竜人は口を開いた。周りの空気は重々しく、より濃くなった。
「初めまして、私はリヤ・ラシカという名だ。竜王様の御下でお仕えしている」
「竜王様・・・・・・ね、それはどうも。それよりその威圧感抑えてくれない?」
「ふむ、これは失礼した。場合によっては必要だったのでな」
周囲の雰囲気がさっきまでのものに戻る。だが、竜人の顔には嫌な笑みが宿った。エルフは口早く言う。
「で、何か用?もう夜遅いし早く帰りたいんだけど」
「あの、なんでそんな感じ悪く振る舞うんですか」
ヒマリはエルフの相応とは思えない態度の内を小さな声で問う。
「・・・・・・別にいいじゃん」
明らか理由があることは明白だ。彼はこれまで心からの意思で行動してはいなかった。だが、今回はまっぴら不機嫌そうにしている。
これも演技なのか、それは誰にも掴めない。
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