第11話 魔法書店の中で・・・・・・

「君、その魔法書見せてくれない?」


エルフは手を差し出しながら、微笑む。


青年は手に持つ魔法書を一回見やり、エルフの姿を不審そうに眺めた。


「あなたはエルフですか・・・・・・。別に良いですよ。どうぞ」


青年は差し出した手に魔法書を置き、エルフは礼を言ってぱらぱらと読み出した。


同じ列からまた別の魔法書を青年は手に取り、読み出す。ヒマリはしばらくエルフの横で一緒に魔法書を観ていたが、青年に視線を移し聞く。


「あの、私達が来る前から居ましたが、一人で解読を?」


「ええ。解読出来ないからと捨てられるのは勿体ない。時間があればここに来て、解読に時間を使わせてもらっているんですよ」


青年は平然とし答える。既に彼はずっと前からこの店に通っているようだった。


「うん!解読完了!これはかなり広範囲を照らす魔法みたいだった。やっぱ見といて正解!」


エルフが魔法書をポンッと閉じながら言うと、青年は目を丸くする。


「えっ、解読できたんですか!?少し見せて下さい!」


彼はそう叫ぶと、閉じた魔法書を再び開き、見返していく。


「そうか!この文字配列は光魔法の魔法陣の四方の一部分を表していて・・・・・・」


その後も一生分の謎が解けたように、一心不乱に呟きながらページの記号をなぞっている。二人は声を掛けるチャンスは掴めず、沈黙が続いた。


―――青年は一区切り着くところまで読み進めると、数分前から自分がどんな様子だったのか認識したようで、手で頭を抱える。


「すみません。お見苦しいところを・・・・・・。ですが、ずっと悩んでいたこの魔法書をいとも簡単に解読してしまうなんて」


「いや、昔の友人がそういう方面の人間だったからたまたま出来ただけだよ」


エルフは珍しく懐かしさがこもった瞳で偶然、と否定するが、青年が言う。


「いえいえ、謙遜する必要はありませんよ」


確かに、彼はいつもは自慢ばかりしていた。


ヒマリは初めて彼の困る姿を見れるかもしれないと、また違った意味で復唱する。


「そうです。謙遜する必要はありませんよ!」


「はっ!そうかぁ。やっぱり僕って天才だった〜?」


うまく策略を躱した彼にヒマリはいつもの呆れ顔に戻る。


「調子に乗らないで下さい」


「冗談だよ。そんなどうしようもなさそうな目で見ないでよ~」


作戦は失敗。抜け目を露わにしない彼を出し抜くには、彼の黒歴史を探すしかない、と彼女はうめいた。

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