第10話 魔法書店

結局、農園の腐敗は止められ、元凶の死霊討伐は完了した。蛇の魔物は農園に留まり、聖水とフルーツを提供することで守り神的存在になったという。


エルフは、「魔物を守り神にするなんて、見たことないよ」と微笑していたが、蛇の魔物も元々は凶暴ではなかったらしい。


・・・・・・まぁともあれ、礼に目当てのフルーツを手に入れられたから良しとしよう、と言い聞かせるヒマリは訊ねる。


「蛇が死霊を吐息で消せたのは、恐らく聖水のおかげですよね?」


「そうだね。あの直前に聖水を飲ませていたから、一時的に聖魔力の宿った吐息が出せたんだと思う」


彼は色褪せ、くすんだ地図を取り出す。


「ちなみに次の台座、ちょっと問題があるんだ」


「問題?何のですか?」


「 洞窟の中にあるんだけど、僕は光魔法は覚えてないし、松明とかランタンも持ってない」


などと彼は言う。手段が無ければ、手段を得なければならない。


「つまり、また街に戻るということですね」


「そういう事〜」


問題と言いつつも、楽観視している彼にヒマリは深く溜め息を残して空を見上げた。




街に着くと彼の案内で、魔法書店に来ていた。民間食堂の裏に入口が隣接しており、古びているが落ち着きのある樫の木の手すりに扉がまた良い。


内装は控えめで一面に本棚が並んでいる。


「こんなに魔法書が・・・・・・。この中から探すんですか?」


「大まかに系統ごとに別れてるから、検索する」


そう言うと魔法機で検索し、一冊ずつ中身を読み始めた。しばらくすると彼は魔法書を閉じる。


「う〜ん、ここに並んでるの買えなくはないけど、結構な値段するから、解読不能本の方に行ってみよう」


「解読不能本?解読出来ないなら意味がないのでは?」


「解読出来るときもあるよ。たまに強い魔法書もあるから見といて損はないしね」


さっきの本と比べ、解読不能だと値段が雲泥の差だ。魔法書はどれくらい解読出来るかが重要な指標の一つということになっている。


だから解読不能の魔法書を見に来るのは、余程の研究者かコレクターらしい。やはりここにも二人以外は誰も・・・・・・。


いや、一人いる。16くらいの栗色の髪の青年、熱心に中身を読んでいた。おそらく研究者の方だろか。


「おっ、あの男の子が持ってる魔法書は・・・・・・光魔法のやつだ!」


エルフが反応する。外見だけで何属性か判る彼も中々・・・・・・「研究してそうですけどね」


ヒマリは青年に近づく彼を追った。


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