第8話 二人の暇ごと その4
北東門前に広がった広場。そこで商人とは合流する予定になっている。だが、朝から外に出る冒険者達もいるため如何せん見当たらない。
「もう来ているのでしょうか?女性だということは聞いていますが」
人で溢れ返る噴水の前に立つ二人は辺りを見渡す。すると、一人の女性が話し掛けてくる。
「あの、今日護衛してくれる二人は貴方たちですか?」
肩から掛けたバッグに、薄灰色の外套で全身を包んでいる。歳は・・・・・・13歳といったところだろうか。とてもではないが、判りにくい。
「そうです、すみません。人混みが激しかったもので」
謝罪をするが少女は手を振り、申し訳無さそうにする。
「いえっ、そんな。私がこんな判りにくい見た目をしているのが悪いので。さぁ、なるべく早い方が良いので行きましょう」
歩きながら話していると、どうやらこの少女はあの老人の孫で、商人としての修行をしている時に今回白羽の矢が立っていたのだと言う。
「この歳で一人旅かぁ。僕はまだ純真無垢に外で駆け回って遊んでいた歳だよ」
瞼を閉じ彼女たちには想像もつかない程昔の自分を懐かしむエルフに、彼女らは微笑む。
刹那、エルフは歩みを止めた。
「どうしたんですか?」
「いやぁ、そろそろ来るんじゃないかと思ってね」
急な足止めに二人はは目を丸くしきょとんとする。
彼は木々が生い茂り、影が落ちているところを指差す。
「聖水を狙って、商人を襲ってる魔物がさ」
雲で日が隠れ、霞んだ細長い影が火の如く微妙にゆらゆらと動く。商人が後ずさるが、勢いよく魔物が飛び出してきた。
細長い体型で地面を這いずり回り体勢を整える。
・・・・・・どうやら大蛇の魔物ようだ。
商人は腕から横方に倒れるが、すぐに二人は駆け寄り壁になる。
「どういうことですか。今明らかに、この子の方が後ろにいましたよね?」
「そのことで確信が持てた。多分この魔物、人を狙ってるんじゃない・・・・・・」
エルフが続きを言おうとするが、商人が先に声を発する。
「―――聖水を狙ってる。この子は聖水が欲しいと言ってる」
「あれ?何で分かるの?」
エルフは見事に自分と同じことを言った商人に疑問を抱く。
「私、実は魔物の考えている事が解る体質なんです。この子は戦おうとしていない。警戒する必要はありません」
「ということは、この魔物はただ聖水が欲しくて商人を襲っていただけで、農園の事とは無関係ということですか?」
「そうみたいだね。でも、聖水が好きな魔物が居るなんて変わってるな」
エルフは少女に言われた通り戦闘態勢を解いた。
どうやら少女は何瓶も入った箱をさらに数箱あの大きなバッグに詰め込んでいたようで・・・・・・。
何瓶か魔物に与えている。そんなペットに水をあげる感じで良いのかと二人は目を細めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます