第5話 二人の暇ごと その1
贅沢な客室で、波に揺られながら目的地まで過ごしていると日も明けてしまい、二人は軽い朝食を小さな売店で済ませていた。
「この世界にもサンドイッチがあるんですね」
「別世界でも人が思いつくことは同じということかな?もしかしたら、神様の趣味かもしれないよ」
「貴方がそういうのならそうなのでしょうね」
そういえば、このエルフは選ばれる前から神と面識があるように話していた。実際のところどうなのかは解らないが、こんなとこで嘘をつく理由こそないから多分本当だろう。
ヒマリがそう考えながら、一口ずつ頬張っていると彼は寝起きとは思えない声で叫ぶ。
「それじゃあ出発〜!」
「まだ食べてるので」
彼女は白い目で諭すが、エルフは話も聞かず荷物をまとめに客室へ走って行ってしまった・・・・・・。
白い浜辺に、透き通ったエメラルドグリーンの海面。地上には比較的高い木々と、赤色のしなやかな花が咲いた低木の二種類が入り混じった林が一面に覆っている。
気温は体温よりも遥かに高いものとなっているが、海からの潮風が絶え間なく打ち寄せ、心地よい。なんとも甲乙つけ難いところだ。
「ええっと、ここはタネイという名前で主に普通の人間が住んでるらしい」
「とりあえず、街に行きましょう」
「なんで?」
台座までたどり着ければ良いため街に行く必要はあまり無い。エルフは首を傾ける。
「多く生産できるはずのフルーツが公に出回ってないんでしょう。その聞き込み調査ですよ」
「あ、それのことね。個人的には行きたくないけど、まぁ仕方ないな」
二人は道なき林の中なるべく木が生い茂っていないところを進み、歩き始めた。
エルフの後をついている少女はずっと思っていた疑問を口にする。
「あの一つ聞きますけど、この世界は誕生したばかりなのに何故、こんなにも成熟しているんですか?」
そう。大人から子供まで人は居るし、建造物も、それこそさっきの客船のように細かな仕事も確立されているのだ。
この世界はもう既に、何百年と経っていてもおかしくない。
彼はしばらく唸り、困った仕草を見せるが、答えを出した。
「この世界に住んでいる生物もモノも全て、当たり前のように土地ができていくのと同時に設定されているんだ」
「だからこの世界にあるものは、僕たち二人以外は、世界そのものってことだね」
「?少しだけ・・・・・・解ったような気はします」
「まだ時間は腐る程あるし、その内嫌でも解るようになるよ」
エルフは、退屈そうな顔をしている。理解は彼女より遥かにしているが、最早その域は固定概念のようなもので、追究しても意味無いと口早に言った。
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