第2話

 それから一週間、ミーシャは発声練習を続けて、すっかり喋れるようになった……のはいいんだけど……


「お姉ちゃん。ママが手術を嫌がったわけ分かったよ」

「どうしたの?」

「ママったらさ、誰もいない時にミーシャ相手に、おばあちゃんの悪口を言ってたんだよ」

「そ……そうなの。まあ、嫁姑の問題は、仕方ないし……それより、ミーシャ。その事は誰にも言っちゃダメよ」

「どうしてニャ?」


 ミーシャは、不思議そうに言う。


「ママがおばあちゃんに虐められるからよ。とにかく、ママとミーシャが二人切りの時に、ママが言った事を他人に言っちゃダメよ」

「分かったニャ。お姉ちゃんやケンちゃんと二人っ切りの時に、言った事もかニャ?」

「もちろん、ダメよ」

「わかったニャ。ケンちゃんが隠した、零点のテストの事は黙ってるニャ」

「あわわわ!」

「ケンちゃん。出しなさい」

「お姉ちゃんが、パパの煙草吸ってた事とかも、喋っちゃダメかにゃ?」

「ダメ! 絶対ダメ!」

「お姉ちゃん。高校生が、煙草吸っちゃいけないんだよ」

「どうせ二年後には、おおっぴらに吸えるからいいのよ!」

「時々、うちにこっそり入ってくるお兄さんの事も、言っちゃダメかニャ?」

「だれ? そのお兄さんて」


 泥棒かな?


「時々、ママしかいない時に入ってくるニャ。でも、ミーシャと遊んでくれないニャ。ママとは、遊ぶのに……」

「遊ぶって……どんな事して、遊ぶの?」


 なんでお姉ちゃん、そんなに怖い顔するんだろう?


「お兄さんとママと、一緒にベッドに入って……ウニュ!」


 お姉ちゃんが、大慌てでミーシャの口を手で押さえたので、ミーシャがその次に何を言おうとしていたか分からなかった。その後、お姉ちゃんは物凄く怖い顔で、この事を喋るなと僕とミーシャに厳命した。良く分からないけど、この事を喋ると家庭が壊れるらしい。

 家が壊れるのは嫌だから、僕もミーシャもこの事は黙っている。でも、これからはミーシャの前で、うかつな事は言えないなあ。


  了

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お喋りしよう 津嶋朋靖 @matsunokiyama827

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