第5話

「僕の名前は、葉月はづき みどりって言います。おじさんの名前はなんですか?」



...さっきも言われたけど、

おじさん呼ばわりは結構来るものがあるな...



減るもんでもないし教えてあげよう。



「...へぇ、斉原さんっていうんですね。」



少し嬉しそうだ。


......話すと言っても、そこまで手話ができる訳では無いだろうし、1音ずついちいち手でやるのは骨が折れるな...



「んー、斉原さん...何から喋ったらいいんでしょうね......、ごめんなさい、僕から話しかけたのに。」



無理に喋ろうとしなくてもいいのに。



「...えっと、その、死のうとしてたんですか?」



随分直球に聞いてくるんだな......


隠すのもあれだし、ここは素直に頷いてしまおう。



「やっぱりそうだったんですね...」


「...あ、そういうこと、話しにくいと思うので、今日は僕の話を聞いてくれませんか?」



まぁ、こっちとしても、その方が楽だな。


こんな真昼間に屋上に来るなんて、この子も恐らくワケありなんだろう。

話を聞いてあげることで、この子が楽になるのなら、いくらでも聞いてあげよう。


どうせ死人に、口なしだ。



「え、なんか期待してます!?そんな重い話なんてしませんよ?フツーに、他愛ない話をするだけです。」



......良く考えれば、出会ってすぐのやつに、自分の悩みをベラベラ喋れる人間なんて居ないよな。

とんだ思い違いだったみたいだ。




その日は本当に、他愛のない話が続いた...

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