第3話

俺の名前は、斉原さいはら ひろむ

歳は今年で39になる。


もう忘れたが俺は、16か17のときに何かの理由で声を失ってしまった。

失声症、とかいうやつだ。


医者に見てもらいさえしたが、半年もすれば治ると言われ、もうかれこれ20年くらい経ってしまっている。


21で良い妻に出会い、そこからすぐに籍を入れた。

しばらくしないうちに、妻のお腹に命が宿ったが、

なぜだかそれを機に俺は捨てられてしまった。


職場から帰ると、妻の姿はもうなかった。


そこから誰にも何も話せないまま、

年月だけが経ち、今に至るというわけだ。


声がないせいで、生活にも支障がありすぎる。

とにかく不便だ。


少し決断が遅いとは思うが、俺は自殺を決意した。


そりゃあそうだろう。

この状況で、普通の寿命分の生活ができるほうがおかしい。


ただ、いざ死ぬとなると、

怖くて飛び降りられないのが現状だ。


明日は死ねるといいが...


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