第4話 息子とその交際相手、そして元保母の娘夫婦
「本来ならここで少し休憩と申し上げたいところですけど、折角ですので、今日お越しの方々にぜひ、昔の絵での紙芝居を御披露したいと思います」
そう言って、山上女史は少しばかり間合いを取った。
そして、静かに述べ始めた。
まだ、木枠の扉は開けられていない。
本日は、日本の昔話を2作、最近描かれた紙芝居で演じさせていただきました。
次のお話は、本日お越しの方にとって、実に懐かしい紙芝居です。その方は、私が初めてこの作品を披露した時、まだ、中学生になったばかりでした。
その後、結婚が決まった時によつ葉園にお越しいただいて、当時園長の森川先生と一緒に、この作品を御覧になられました。
その後御覧になったことはないはずですが、その方の代わりに、昨年3月末、私がよつ葉園を定年退職されるときに、この作品を、息子さんとその御友達になる方が一緒に御覧になりました。
その時の絵で、紙芝居を1作、披露させていただきましょう。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
特に名指しされたわけではないが、自分と息子らのことであることに、大宮哲郎氏はすぐ、気が付いている。
確かに、あの絵は、子どもの頃に見ている。
そればかりでは、ない。
その紙芝居の文章を作った、とはいえそれは、英語を日本語に翻訳したのであるが、その翻訳者たちは、大宮氏の兄とその同級生たちであった。
その作品の名は、「青い鳥」。メーテルリンク伯爵原作の童話である。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
木箱の扉が、開かれた。
その木枠に入っている絵は、確かに、古い絵である。
しかし、保存状態はすこぶるよい。
山上女史は、話を進めていく。
異国情緒あふれるこの作品を、先までの日本の昔話と変わらぬペースで、静かにそして淡々と、進めていった。
青い鳥は、主人公の兄妹たちの家の鳥かごの中にいる。
描かれて40年近くになる絵が、不思議と郷愁をそそる。
話は終わり、木箱の扉は閉じられた。
・・・ ・・・ ・・・・・・・
ここで、少しばかり休憩をとることとなった。
太郎氏とたまきさんが、山上女史に挨拶に向かう。
「山上先生、お久しぶりです」
「太郎君にたまきさんですね。お久しぶりです」
程なくして、大宮哲郎氏もやって来た。
「山上先生、昨日はお呼止めして申し訳ありませんでした。せっかくですので、今日は、昨日申し上げておりました通り、息子と、それからたまきさんにも来てもらいました。一応、O大学の新聞部の取材も兼ねて呼んでおります。無理のなさらない範囲で、どうかご協力くださればありがたいです」
「大宮さん、ありがとうございます。もちろん、そのつもりです。それから、今日はそろそろ、うちの娘夫婦も参ります。よろしければ、あとでお話でも」
「そうですか、ちょうどいいや。それでは、お二人も含めて、どこか近くの喫茶店でお話しできれば」
そうこうしているうちに、山上女史の娘夫婦もやって来た。
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