カンパネルラ

重力軸の鍛冶場にて

解放区にはあると、小市民はいう

解放区がゲルマン人を拒んだのには

ひとつ鐘があるからで


部族の滅びで

絶歌の凶弾で

ある神の消滅で

僕らが知らぬままで終わる奇譚が

零度距離正面で伝えるのだ

終わりはなくただ続くだけだと


アラビアの大ハーンが欲しがり

ダキアの小帝国もガリアのアナーキストでさえも知らない

四度、壁に打ち付けたその音は

不幸の音がしたから、

僕は今閉じ込められて言葉を出し続けている


一度なるたび、顔は沈んでいき

二度なるたび、言葉は沈黙に近くなり

三度なるたび、親子が亡命する

四度なればどうなってしまう?


僕は知らないふりをする。今日も四度なる前に寝る


次第に日は経つが

僕は四度なるのが恐ろしくなり、きかないふりをして聞かない

耳を閉じて、声を荒げて壁に手を打ち付け地団駄を踏んで

きかないふりをする

だが、夢は終わらぬから小帝国の皇帝は鐘を聞きたがるのだ

夢に終わるとそこでカーテンコールで下ろしたままにしたいのだ

僕は終わりたくないから今日も夜を背にせず寝る


僕はそんな思いだったのに、風が吹いて車輪は回るから

大ハーンの軍勢がやってくるから

それを受け入れざる得ないから

車輪のカラカラ回る音に脳がやられて

僕は四たび鳴ったことないそのカンパネルラを聞いたのだ

一度だけ、一度だけやってくるその四たびなる鐘の音を

僕は耳に入れたいその切実な思いで


ひとたびなれば風が吹く

ふたたびなれば太陽は登る

みたびなれば夜は来る

よっつなけば明日は来る


なんだ明日はやってくるのか

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