3cm

あなたとの距離に

ただある3cmの壁は

合理<ただしさ>では測れない

天響くの鐘の音の不条理さで

あたしでは届かず

あなたは星となった


少女はあたしを見上げて沈黙する

それは夏休みの始まり

そこにあなたがいないと

語り始める前にあたしは少女を抱き上げ

語るのだ

「あなたが生まれる前にはね

この足はなかったの

この空はなかったの

この海は枯れていたの」

怪訝そうな顔を少女がするから僕はあなたを真似て

「ウソよ」

カラの玉手箱を開け少女はすっかり老いたみたいだから

その頃には眠りこけていた


あなたが伝える言葉をあたしは一字一句残さず伝えよう

未達の大地を

不全の空を

不在の海を

全てあなたの声で或るものだ

沈黙がやがて来る詩を

あなたの声で書く


少女を起こす

「3cm届かない、手伝って」

あたしがそういい、羽でとんで少女手伝う

「簡単よ」

「そうだよね」

あなたを真似てあたしは描く

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