母なる黒インクは青さを思い出す君を愛する

その長きにわたるインク闘争は

ライ麦パンによってかすれ引きのばされる

黄金のしゅうだんにぬりつぶされたその青さは

赤インクで燃やされるよりも緑インクで修正されることを望んだ

もとの色を失いきみはどこへいく


愛国の黒インクよ

そのまくあけは高架下の緑軍が会戦をつげるとき

おとがなれ

白のさけびごえがめのまえにおちる

さけびごえの群れはひこうきぐもを呼びよせて

おおくひとがしぬ

さなかに青さをおもいだしたひとびとは

総動員にて緑をやきはらう詩を手によらせて

黒インクが生きることの介入をし走らせる

青さをとりもどせとさけび

こえを走らせる黒インク

だがきみのもじがライ麦パンによってかすれて引きのばされるその日

それはきみのたたかいが終わった日になる


救国の黒インクよ

最終戦争それは

青と黄金のぶんりするじだいである

青と黄金のないせん

それはまちがいで

最終戦争とは黒色をしてぼくらにせまるものだと

さけびごえのなか僕らは知る

黒の戦争は赤く燃えるさかるくうしゅうによって

せんねんつづくと黄金のこっきがしらせる

黄金のこっきは言う

「生存圏 収容所 楽園 列島

勝てばこれ全てを得る

負ければ祖国を喪う

そしてかってもまけても黒インクは青とともにほろびる」

きみのたたかいが終わる日にぼくらはかすれ引きのばされる


憂国の黒インクよ

ぼくらはきみと青を喪った

ぼくらが生きるれきしに

ライ麦パンがおしよせてきたきじゅつがのるまえに

ぼくらがれきしとなるまえに

青色の葬儀をきみとしたかった


喪失の黒インクよ

けっきょくは葬儀にはまにあわなかったな

楽園の創造も祖国の喪失も同じである君ゆえに

かかえ生きる黒インクは言う

「きみよ、青の幻影を見失うきみよ

焼けたそうげんの土がきみの家をつくる土地だ

きみよ、楽園を得るきみよ

楽園にてきみはきみであることを忘れるな

詩の書き方をきみら、わすれるな」


黒がなくてもよくなった赤い影差すれきしにて

こぼされたカーペットがだんだん黒に染まるとき

なお黒インクは再来し告げる

「廃墟から復活するは、

生存圏からでも、

収容所からでも

青い空からでも

焼けただれた街からでも、

再建されたビルでも、

ライ麦パンでもなく、

さかえては滅びることに狂うわれら

黒インクである」

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