第13話

 現れたのは、魔法使い御一行様。

 家電を取り寄せる魔法を使い、この世界一の富豪ソロ・カンジョウ様。


 十人の魔法使いが、その杖をこちらに向けています。

 十人の弓使いが、こちらに向けて、矢をつがえています。

 十人の盾使いが、盾を向け、

 十人の槍使いが、槍を向け、

 十人の勇者が……。



 奇跡の湖が、もう近いのでしょう。

 既に、霧がかかり、私の見えない姿もぼんやりと浮かび上がります。



「お前たちは、奇跡の湖に向かっているらしいな。あの湖が産み出すお宝は、全て俺のものだ。おい、牡鹿。あのときの恩を忘れたか?」


「お前から貰ったせんべいは、一枚。マリーから貰った鹿せんべいは、お前から貰ったものより多い。当然、マリーの味方だ」


 牡鹿さんは、鹿せんべいのお味方。

 せんべい魔法のある限り、マリーに従う。

 

「そうか、お前があの娘か」


 何でしょうか?

 ソロさんは、私の事をご存知ですか?


「ヤッテ、おしまい!」


 ソロさんが合図すると、魔法使いたちが、攻撃を開始。

 杖から火球が飛んで来ます。


 弓使いからは、数え切れないほどの光弾が、

 槍使いは、一斉に突っ込んできます。


 盾使いは、動かず。


 暖かい火球と明るい光弾は、私たちの前で全て消えてしまいました。

 

「マイナちゃんありがとう」


「いえいえ、僕ではありません」


 肩のカラスが答えます。


「それでは、ケロちゃんありがとう」


 トイ・プードルが首を振る。


「もしや、気づいていないのですか?」


 ケロちゃん私に、言いました。

 火球と光弾消えたのは、私の力と言いました。


 私にあるのは、鹿せんべいの魔法と歌と踊り。

 それ以外は、何もないはずですが。


 少し遅れて突っ込んでくる槍使いの屈強な男たち。

 霧の中、私たちと槍使いの間を人魚さんが泳ぎます。

 ツインボーカル私の相棒。

 槍使いたちの心を鷲掴み。

 魂を抜かれたように、相棒を見つめる男たちのハートを浮かべた目。

 戦いの中、戦いを忘れた彼ら。

 全員、コモリさんの光弾を受け戦闘不能。


 ダンッ!

 

 突然の大きな音。

 ソロさんの手には、大きな拳銃。

 私に向けた銃口からは、煙が。


 

 

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