第11話

 北のお山の水たまり、人魚の姉さま、会いしました。


 キレイなお姿、黒い髪、光る尻尾は宝石か?

 しかし、彼女は、ボッチさん。

 さみしい、さみしい、ひとりきり。

 めんどくさいので、指輪をはめて お訊ねしました。


「人魚さん。どうしてこんなに海から離れた場所で、暮らしてているのですか?」


「私たち人魚は、思春期にいちどだけ、尾が脚になります。地上を歩く感覚を知るのです。人を知り、人の怖さを知り、人の優しさを知る旅に出かけます」


 人魚さんは、その旅で、人間と素敵な恋をしました。

 おふたりで暮らされたのは、この湖の畔。

 2年後、彼女の足は、徐々に魚の尾に戻っていきます。

 おふたりの間に生まれた赤ちゃん。


 彼女は、赤ちゃんが成長した姿。

 彼女は、足と尾を自由に入替えられます。

 彼女は、特別、その力。

 この世界に水蒸気がある限り、空を自由に泳げます。


 人魚と人間の間に生まれた、子供は、しかし。

 海の世界では、嫌われます。


 人との出会い求めて、何故?


 人間の方は、そもそも人魚の存在を知りません。


 お母様の人魚さんは、ある雨が土砂降りの夜。

 雨の中を海まで泳いで帰られました。

 普通の人魚さん、雨の中なら泳げるそうです。


 あら、育児放棄かしら?


 ここで、プツンッ!


 3分の持ち時間終了。

 私は、再び透明人間。


 キョロキョロする彼女。


 歌で事情を説明します。


♪透明人間この私、自分の姿を探す旅

 今は泉を探す旅、魔法の泉を探す旅

 歌と踊りのその時に、私の姿は現れる

 泉に暮らす人魚さん

 百年月を取り込んで

 この世の奇跡を起こすという

 魔法の泉は、とこでしょう?


 ♪お魚たちが、噂した

  遠いお空のその下の、翠の水を湛えてる霧に隠れた隠れた湖が月と仲良し湖です

  1年1度の煌めく夜

  百年月の真夜中に、月と一緒に光ります 

  一晩中のお喋りの楽しい時を過ごします♪


♪貴重な話をありがとう

人魚さんのそのお声

心がうっとりする美声

永く聴いていたいけど

人魚さんのその姿

歌わなくても、消えません

普通に話して大丈夫♪


 人魚さんのお顔は、真っ赤っか。

 恥ずかしそうなその仕草。

 きっとアイドル向いてます。


 私が姿を取り戻す。

 その時ふたりで歌いましょう。

 ツインボーカルアイドルのグループここに誕生です。

 


 




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る