第8話

♪スマホってこれのことかしら?


 差し出された私の手の上のスマホ。

 皆さんから見ると空中に浮いているスマホ。

 驚いた勇者さん。

 目がテンの弓使い。

 

 どうして?

 今まで、転生組がどんなに望んでも手に入らなかった。

 電波が異世界間を越えるのだから、使えるはずとみんなが望んだのに!


 弓矢のコモリさんの反応から、スマホひとつが手に入らなかった事が、とても重大なことと、わかりました。


 でも…。


♪こんな物もありますが、


 タブレットが私の手に握られています。

 もちろん皆さんには、空中に浮かんで見えています。

 ヒキ・コモリさんは、ひったくる様に私から取ると、作動良好を確認されました。

 涙を流す弓矢名人コモリさん。


♪泣かないで~、泣かないで~

 今よりもましな〜、生活が出来るよ〜

 スマホのために、泣かないで〜♪


 こんな事くらいなら、いつでもお役に立ちます。


 言葉が、曲に乗っていません。

 仕方ありません。

 指輪をポチッとはめました。

 これで3分間、私の姿は皆さん見えます。


「あなたは、特別らしい」


 無口だった僧侶のフクさん

 突然、饒舌におしゃべりをはしめました。


「そもそも、身体が、透明であるという事が不思議だ。まして、異世界間にある物をを自由に手に入れる事が出来る。もしやあなたは、伝説の女神、この世界の救世主」


「あら?あなたは、コウサ・フク様、僧侶様。女神さまとは、近くて遠い存在。そもそも、この平和な世界に救世主なんて必要かしら?」


 夕餉の煙は、色を失っていく空に吸い込まれ、夜空には、いつの間にかお月さまが。

 家々の窓辺とお月さまの幸せの光の競演です。

 あの光は、電球の光。

 

「電球も持ち込んだのかしら?」


「いいえ、あれはこの世界で産まれたもの。それを産んだものが、家電を取り寄せる魔法道具の持ち主」


 今度は、魔法使いのカ・フンショウさんが教えてくれました。

 そして、この世界の伝説。


「そして、世界に3つの幸せが、訪れる時、恐ろしい魔王が、出現する。同時に魔王に対抗する力を持つ者も現れる。この世界は、戦いの炎に包まれる」


 三つの幸せ?

 電気、ガス、水道かしら?


「いかにも異世界らしい設定だけど……。何の力もない私には、関係がな…プチンッ!」


 3分経過したようです。




 


 


 

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