対決エヴィルス 惑星の器
第16話 外宇宙災害指定種x
リカンシ「エヴィルスが、この惑星に向かってる!!」
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魔王「俺の名はウルティモ・ラフレス。・・・マジカ・ラフレスの正真正銘の兄だ・・・」
司令室ではリカンシが血相を変えるとエジに緊急事態を告げ、
大広間前では魔王が自身の隠していた過去をアビシニアに告げるのだった。
♢
大広間前の休憩室は、魔王の発した一言で静寂に包まれる。
シーンと静まり返ったような雰囲気が重く二人にのしかかると
静寂に押しつぶされたように、二人は俯く。
自身の影を見るように俯いた魔王は、長く伸びる自身の影をそっと眺めると瞳を閉じる。
触れられたくない傷跡が開き、自ら吐き出した想いに耐えかねてか、重石をつけたように徐々に沈んでいく顔には影が宿ると、切なそうに垂らした眉には哀愁が漂う。
アビシニア「…そういうこと、だったんですね」
アビシニアも魔王の辛い心境を一言で理解してしまうと
魔王が自宅で呟いた悲しげな独り言を思い返してしまうのだった。
魔王「「お前も、あの嫌われ者に用があったんだな…」」
アビシニアにとって、魔王が呟いた一言は予想以上に重く感じてしまう。
魔王と同調したように項垂れてしまう悲壮な顔つきを隠すように
そっと視線を横に反らすと、唇を噛み締めるようにして閉じるのだった。
自身の影を見るよう俯いていた魔王だったが、そっと視線を反らしたアビシニアに気づくと
顔を合わせるようにして優しく微笑む。
魔王「顔を上げてくれ、アビちゃん」
魔王の呼びかけに、アビシニアは反らしていた視線を上に向ける。
アビシニア「・・・」
魔王「…良ければ俺の情けない話を聞いてほしい」
薄っすらと微笑む顔に哀愁を漂わせ、切なそうに吐息を漏らした魔王はアビシニアを見つめる。
その顔は微笑んでいながらも、どこか無理やり顔を作ったような、ぎこちのなさが
浮かび上がっているように、アビシニアは感じ取れてしまうのだった。
アビシニア「…魔王さん」
アビシニアは少しだけ顔を傾けながらも魔王に顔を合わせる。
どこか悲痛な面持ちを隠し切れない魔王の顔は、アビシニアにとって、少しだけ焦点を合わせるのが辛く思えてくる。
魔王を見つめるアビシニアの両方の瞳は少しだけ垂れ下がった瞼から伸びる長い睫毛に覆われると、同じように下がった唇の両端には下唇を持ち上げたような皺が浮かぶ。
魔王「ああ、そんなに気にせんでくれ」
魔王はアビシニアの心境を察してか、優しく垂れ下がらせた瞳で言うと再び微笑む。
魔王「今は二人のおかげで楽しく過ごしている。だから、大丈夫だ」
魔王は瞳を大きく開くと、合図するようにアビシニアに首を傾けた。
アビシニア「・・・そうでしたね」
アビシニアは魔王の声にゆっくりと頷くと言葉を返す。
アビシニア「魔王さんには、ルーさんとチーさんが居ますもんね」
顔を上げたアビシニアが魔王に微笑みかけると、魔王も微笑みながら頷き返す。
魔王「あぁ。両手に花だ」
魔王は少しおどけた様に目を瞑りながら、手のひらを上に向けると、
自慢するような、したり顔をアビシニアに見せつける。
その様子を見たアビシニアは、そっと口元を片手で隠すと吊られたように笑い声を上げる。
アビシニア「ふふ。そうですね」
魔王「あぁ。だから・・・」
魔王は不意に微笑むようにして緩めていた口元を引き閉めると、
多少鋭さを増した目つきでアビシニアを見つめた。
魔王「俺の話を聞いてほしい。俺の妹、マジカ・ラフレスの事を」
アビシニア「はい! 私で宜しければ」
アビシニアは力強く頷き言葉を返すと、魔王も無言で頷き返す。
お互いが間を取るように見つめ合った後、魔王はゆっくりと口を開くのだった。
魔王「話は7年前に遡る。俺が20歳、妹のマジカが17の時だった・・・」
魔王は思い返すように廊下の端を見上げながら、自身の過去に起こった出来事を
ゆっくりと話し始める。
魔王「それまで仲睦まじく暮らしていた俺達だったが・・・
ある日を境に妹のマジカが、まるで呪いにでも掛かったように
周囲から嫌悪されるようになったんだ・・・」
アビシニア「・・・」
魔王の遠くを見上げる視線は不意に俯く。
思い返すのが余程辛いのか何度か長い瞬きをした後に、小さく鼻から吐息を漏らす。
魔王「街中の視線がマジカを睨みだすと、嫌悪の声は肥大するように膨れ上がり、
遂には実の両親までマジカの事を嫌悪し始めることになる」
魔王は瞳に力をこめると眉間に大きく皺を寄せ、悔しそうに顔を歪ませる。
魔王「辛かったよ。マジカは俺なんかより、もっと辛かったはずなのに・・・」
アビシニア「・・・」
魔王は視線を反らすように横に向けると下唇を噛み締める。
噛み締めるように閉じた唇には上歯の形がくっきりと浮き出ると沈みこんだ思い故か少し詰まるような吐息を漏らす。
その息詰まるような吐息の音をアビシニアは聞き取ると上下に閉じた口を微動だにさせず無言で見つめる。
魔王「俺は泣いているマジカを慰めたりする事しかできず、
家族に抗議しようが聞いてももらえず・・・」
魔王は発言の途中で思いが込み上げたのか、グッと力強く瞳に力を込めるとアビシニアに訴えかけるように振り返った。
魔王「誰に! 何を言おうが! 聞く耳を持ってくれなかった!」
魔王は大きく声を張り上げると、両腕を力強く振り下げる。
その訴えかけるような視線には、蓄積されたような想いが乗るのだが、吐き出した言葉と共に振り下げた両腕に釣られるように、力が抜けた首を垂らすのだった。
アビシニア「・・・」
アビシニアは項垂れる魔王を無言で見つめる。
頷きもせず、ただじっと魔王を見つめると、
魔王を覗き込むようにして声を掛けた。
アビシニア「なぜ・・・そのような事が」
魔王「・・・わからない。わからないんだ!」
アビシニアの問いかけに魔王は垂れ下げた首を、身に覚えがない事を強調するように左右に振った後、俯いた顔を少しだけ上に向けた。
魔王「…何がなんだかわからない俺は、
この街も、両親も、おかしくなったと思い、
マジカを連れて街を出ようとしたんだ…、だが」
魔王は力強く両方の拳を握り締める。
魔王「俺はそこで、取り返しのつかない事を起こしてしまう・・・」
魔王は悔いるような言葉を漏らすと奥歯を音が鳴るくらいに軋ませる。
軋ませるように閉じた口と同時に、思い返すように瞳を閉じた瞳は、
まるで自身を嫌悪するかのように震える顔をアビシニアに強調してみせる。
魔王「・・・出立の準備中。他者に対する苛立ちからか、
マジカに話しかけられた際、『少し黙ってくれ!』と
邪険に言葉を返してしまったんだ・・・」
「その後、マジカは無言で自室に戻ると翌朝には姿を消していた」
アビシニア「・・・」
魔王の悔いるような懺悔は続く。
垂れ下げた首には、積年の想いが重く圧し掛かると、徐々に濃くなっていく顔の陰影は、自身の過ちを悔いる姿を助長する。
魔王「あいつにとっては、俺だけが頼りだったろうに!! 俺は・・・俺は」
魔王は声を震え始めると、項垂れる自身の頭を支えるように、こめかみを握り締めた掌で瞳を覆う。
魔王「あいつの置かれた立場が一つもわかってやれない俺は・・・」
魔王は自身の罪を隠すように掌で覆っていた顔を見せつけるようにして、アビシニアに振り向いた。
魔王「兄としても! 人としても!」
魔王は声を荒げると、後悔に打ちひしがれたように顔を歪める。
魔王「失格だよ・・・」
アビシニア「魔王さん・・・」
再び罪の意識から項垂れた魔王は、生気が抜けたように立ち尽くす。
多少虚ろになった瞳は定まらない視線を揺らすと、心配そうに名を呼ぶアビシニアにも気づけない程に懺悔する様に頭を垂れた。
より暗く、より黒く、濃くなっていく自身の影に、飲み込まれていく様に体を小さく丸めた。
魔王「…その後、俺はマジカを追い求め、駆け回る事になるが・・・
結局は会えずじまいに終わったんだ・・・」
アビシニア「…そう、…だったんですね」
魔王は床に呟くように声を出すと、力の抜け切った腕をダラリと垂らす。
消え入りそうな程小さくなっていく魔王の姿をアビシニアはじっと見つめる。
見つめながら頷くようにして言葉を返すと、魔王と共感したように少しだけ重くなった自身の頭部を下に向けた。
魔王「・・・俺がマジカと出会えたのは、誰かの・・・
いや、ウーガーが作ってくれたマジカのモチーフのついた墓だったよ」
アビシニア「・・・」
魔王は取り繕った顔に切なそうな笑みを浮かべるとアビシニアを振り向く。
アビシニアは魔王の取り繕ったような笑みを見て思う。
自身を咎めてくれと言わんばかりに合わせてきた顔も、自身を否定するように左右に振られた首も、所詮自分はと言いたげな態度に、アビシニアは同調したように少し下げていた瞼を大きく開くと、魔王を見つめる瞳に力を込める。
アビシニア「魔王さんは全部自分のせいにしすぎです!!」
魔王「…えっ」
アビシニアは今まで同情するかのように頷くのみだったが、突然叱咤にするように
声を張り上げると多少怒気を帯びた顔を魔王に見せ付ける。
不意に尖らせたアビシニアの顔は、自分の言うことを聞いてほしいと切に願っているようで、その訴えるような視線は俯いていた魔王の顔を少し持ち上げると、自身に向けられた想いに驚くように声を漏らした。
アビシニア「全部魔王さんのせいな訳、ないじゃないですかっ!」
アビシニアは再び叱咤するように声を大きくするが、魔王を見つめる瞳は力強く開きながらも少し潤んだように照明の光を反射させると、魔王の情けなく垂れ下がった瞼を少しだけ開いて見せた。
魔王「・・・アビちゃん」
アビシニア「全部マジカさんを思っての行動に、
悪い事なんてある訳ないじゃないですか!」
アビシニアは魔王に訴えかけると、自分の事の様に下唇を噛み締める。
悔しそうに俯かせた顔は垂れ下がった前髪に隠されると、歯痒そうに震えさせた
唇をゆっくりと上下させる。
アビシニア「・・・私はそんな考えおかしいと思います」
アビシニアの必死な訴えかけは、魔王の耳にも届くことになる。
魔王は面食らったような顔をアビシニアに見せつけるが
今まで凝り固まるように胸の中を蝕んでいた贖罪にも似た自身の言い訳に
気づかされると、魔王は両目を覆うように伸ばした手で自身の瞳を隠す。
そっと蓋をした瞳の奥には過去から目を反らす自分が映りこむと、
自身を咎めることが救済に繋がっていた事実にも気づくのだった。
魔王は自身の身の内を浮き彫りにされた事実に、少し恥ずかしそうに顔を横にそらすと苦笑いする。
魔王「…はは。…やっぱり適わんな、君には」
魔王は呆れるように力の抜けた笑い声を上げると、両目を覆った掌を震わせながら小声で呟く。
魔王「・・・ありがとう」
魔王の小さく呟いた独り言は誰にも聞こえなかった。
俯いているアビシニアにも、そっぽを向いた魔王の口の動きはわからない。
だが、ようやく待ち望んだように吐き出された、その言葉は、今まで自身の心を侵食していたものを少しだけ和らげたのだった。
お互いが顔を合わせぬまま、しばらく時間が経過する。
ただ、アビシニアのおかげで重く圧し掛かっていたような静寂はどこか消え去ると、
魔王の酷く歪だった陰影は照明に照らされまっすぐと伸び始める。
そこには過去の贖罪で自らを押し潰した魔王の姿は最早無く、視線をアビシニアから反らしながらも、口角を緩める姿が照らされた光に浮かび上がるのだった。
口を閉ざす二人だったが、静寂を掻き消すように、アビシニアの指につけたリングが赤色に発光すると警告音にも似た音をたて始める。赤色に発光するリングと、どこか緊急の事態を知らせるような音に、アビシニアは驚いたように顔を上げると自身の身に着けるリングに触れるのだった。
アビシニア「エマージェンシーコール?!」
魔王「・・・?」
血相を変えたアビシニアがリングに触れると、浮かび上がるように空中にエジの顔が投影される。
投影されたエジの顔はいつも以上に深く眉間にしわを寄せると、画面いっぱいに焦燥感を漂わせ、大きく口を開くのだった。
エジ「「エマージェンシーコールだ!
エスペラ隊員は至急ミーティングルームに集まってくれ!!」
映像から聞こえたエジの声は矢継ぎ早に緊急事態を知らせる。
その焦る様な声色に、アビシニアは椅子から驚いたように立ち上がると画面のエジに声を返す。
アビシニア「こ、コール内容は?!」
アビシニアは焦りから言葉を詰まらせながらも問いかけると、エジは少々強張らせた顔で、少々口ごもる様に間を作った。
エジ「「・・・エヴィルスだ」」
アビシニア「エヴィルス!?」
エジからの返答を聞いたアビシニアは驚愕するように目を見開く。
聞き返すように発した言葉は声量を上げ、焦りからか床を力強く踏みつける。
エジ「「ああ! エヴィルスが、この惑星に向かっている!」」
アビシニア「わかりました。すぐ向かいます」
アビシニアはエジからコール内容を伝えられると、取り急ぐように通信を切る。
空中に投影された映像が消えると、アビシニアは足先を廊下の端に向ける。
向けられた足が歩みを始めようとした時、今まで静観するように黙っていた魔王は
アビシニアに声を掛ける。
魔王「エヴィルス? アビちゃん。エヴィルスとは何だ?」
不意に魔王から尋ねられたアビシニアは歩みを止めると、踵を返した脚を再び返す。
そして、長い髪を揺らすように勢いよく魔王に振り返った。振り返ったアビシニアの顔は、ただ事ではない事態が起きている事を魔王に如実に知らせると、瞳はやや尖り魔王を真剣に見つめる。
アビシニア「先ほど私達の任務には荒事も多く、
外宇宙災害指定種と呼ばれる生物との戦闘も
多いとお伝えしましたよね」
魔王「ああ。確かに言っていたな」
魔王はアビシニアの言葉に頷くと、アビシニアもゆっくりと頷き返す。
アビシニア「えぇ。
エヴィルスとは、外宇宙災害指定種の中でも
分類不能を表す、4つの記号を冠に持つもの」
「q(クーオ)w(ドォオブラ)x(イクソ)y(イプスィーローノ)の
内のx(イクソ)を司る生物・・・」
アビシニアは間を作るように一度瞳を閉じた後に、
次の言葉を強調するように魔王を見つめる瞳を大きく開いた。
、
「指定ランクx(イクソ)。
惑星の寿命を知るもの「エヴィルス」が、
この惑星に向かっているみたいです」
アビシニアの鬼気迫る表情と声で多少の事情を察した魔王は、身構えるように瞳を尖らせると言葉を返す。
魔王「惑星の寿命を知るもの? かなり仰々しい冠名だが
相当に危険な奴なのか?」
魔王の問いかけにアビシニアは即座に頷き返す。
アビシニア「ええ。仰るとおり相当危険です」
「滅びを迎える惑星のエネルギーを
糧とするような凶悪な生物です!」
魔王「・・・」
アビシニアの表情は深刻さを告げるように尖る。
魔王は自身を真剣に見つめる視線と返された深刻な内容に口を閉ざすと、やや傾き加減の顔をアビシニアに合わせた。
アビシニアは事態の深刻さを察しながらも、詳細がわからないと言おうとせん魔王に顔を合わせる。
アビシニア「すみません。詳しくお話したいところですが
時間がありません」
「私はこれからミーティングルームに向かいます」
アビシニアは矢継ぎ早に魔王に告げると再び踵を返す。
歩み始めた脚は歩幅を大きくすると、床をカツカツと鳴らす靴の音は
速度を上げるように徐々に早くなっていく。
だが、アビシニアが歩き始めて暫くたつと、後ろから自分を追うような床を蹴る音がアビシニアの耳に届く。
大きくなっていく足音は、不意に後ろで止まるとアビシニアの肩を掴むのだった。
魔王「待ってくれ、アビちゃん」
魔王に肩を掴まれたアビシニアはゆっくりと振り返る。
アビシニア「魔王さん・・・?」
振り返ったアビシニアに魔王は真剣に尖らせた瞳を合わせると声を掛ける。
魔王「俺も連れて行ってほしい。
もしかしたらだが、
俺ならウーガーに助力を頼めるかもしれん!」
アビシニア「・・・」
魔王からの突然の申し出にアビシニアは多少傾けた首で瞬きを繰り返す。
少しだけキョトンとした表情を見せるアビシニアに、魔王は顔を近づけると言葉を続ける。
魔王「あいつは、この世界の滅びを望んではいる!
だが、マジカの兄である、俺の声なら届くやもしれん!」
アビシニア「・・・」
声を掛けられたアビシニアは頷きもせず、暫く無言で魔王を見つめる。
そして、考えるように瞳を閉じると魔王の申し出を了承するように大きく頷くのだった。
アビシニア「わかりました。私についてきて下さい」
魔王「ああ。恩にきる」
魔王もアビシニアに頷き返すと二人はミーティングルームに向かうべく
共に歩みを進めるのだった。
♢
アビシニアが指に付けているリングを扉に翳すと、自動で部屋の入り口が横に開く。
横に開ききった扉を確認するとアビシニアは一度後ろにいる魔王を振り返る。
準備ができたと言わんばかりに後ろに居る魔王に合図するように頷くと魔王も頷き返す。
頷き返した魔王を見て、アビシニアは前を向くと部屋の中へと入っていくのだった。
アビシニア「すみません。遅くなりました」
エジ「あぁ、問題ねーよ」
「これで全員揃ったところ・・・」
軽く会釈したアビシニアに、エジは前の席から顔を合わせると声を返した。
だが、アビシニアの後ろに居る魔王に気づくと不機嫌に顔を尖らせる。
エジ「何でお前がついて来てんだよ」
エジの不快感を露にした物言いに、魔王は即座に真剣な顔をエジに合わせると言葉を返す。
魔王「エヴィルスの件はアビちゃんから聞いた。
訳あって参加させてほしい」
魔王の申し出に、エジは更に不快感を露にすると唇を尖らせる。
そして、尖らせた唇から間を挟むように舌打ちを返すと魔王を睨みつける。
エジ「部外者のお前に話すことなんてねーんだよ!!」
エジが机に拳輪を叩きつけ立ち上がると声を荒げた。
怒声にも似た声が部屋の中に響き渡るが、アビシニアは即座に反論するようにエジに近寄る。
アビシニア「待ってください、エジさん!」
エジ「あぁ? なんだよ、アビー」
アビシニアは顎を尖らせるエジに待ってくれと合図するように腕を伸ばす。
アビシニア「お願いします。
魔王さんにも話を聞かせてあげてください」
アビシニアはエジに訴えかけるように言葉を返すと皆に頭を下げる。
エジ「そんなこと・・・」
リカンシ「いいよ。僕が許可する」
怒声を上げようとするエジを止めるようにリカンシはエジの声を遮ると魔王に顔を合わせる。
エジ「リカっ!!」
エジは声を荒げると睨むようにしてリカンシを振り返る。
だが、振り返ったリカンシの顔はエジの知る、いつもの表情とは違い、
冷酷に尖った瞳は声を荒げるエジを突き放すように見つめるのだった。
リカンシ「艦長命令だよ。エジ副官・・・」
エジ「っ!!」
リカンシ「もう一度言うよ。僕が許可する」
リカンシの声はエジの反論を許さなかった。
一言もエジに発せさせないまま押し黙らせると珍しく威厳のある顔つきで魔王を振り返る。
リカンシ「魔王君。アビシニアの横に着席しなさい」
リカンシは魔王を見つめながら、アビシニアが座るであろう空席にリングをつけた指先を翳すと、床から浮き出るように球体の座椅子が現れる。
魔王は突然浮き上がった座椅子に驚きながらも、リカンシに軽く会釈すると言葉を返す。
魔王「恩に着る。リカンシ艦長」
リカンシ「うん。座りなさい」
エジ「っ・・・」
リカンシに促されると魔王はアビシニアと共に座椅子に着席する。エジはその様子を声を押し殺すようにして耐えると、悔しげな表情を隠すように顔を横に向ける。
10人のエスペラ隊員に、突如参加を許された1人を加え
宇宙規模の脅威エヴィルスについての対策会議が始まるのだった。
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