第5話 独占欲(5)
「あ?あぁ……」
女の先輩の問いかけに、ちい兄ちゃんは気怠そうに答えた。家とは違うちい兄ちゃんの態度に、胸の奥がチクりと痛む。ちい兄ちゃんは学校で私に会うのが嫌みたい。学校で偶然会うと決まってこうして困ったような顔をする。
「こっちおいでよ!お話しよう!」
そんなちい兄ちゃんの態度に気付くはずもなく、女の先輩は私に向かって手招きをした。それを断る理由もないから、気まずいけれどおずおずと先輩たちの輪へと近づく。女の先輩は数人居て「やっぱり可愛い!」「ていうかちっちゃい!」などと、口々に私への感想を述べた。男の先輩たちは、私のことを物珍しそうに眺めている。
「美鈴ちゃんじゃん。久しぶり!」
そんな中で気さくに話しかけてきたのは、一人の男の先輩だった。この人誰だっけ。確か一度うちの家に遊びに来た事があると思うけど。名前なんて覚えてないや。
「あ……。お久しぶりです」
その人のことをよく覚えていなかったけれど、一応挨拶しておいた。うちに遊びに来たってことは、ちい兄ちゃんとそれなりに仲が良いってことだろうしね。しかしこの人、金髪の髪をやたらとワックスでツンツ立ててるなぁ。変なの。ちい兄ちゃんみたいに茶色の髪をワックスで自然に流す方がカッコイイのに。だからと言ってこの人がその髪型似合うかは知らないけど。何でもちい兄ちゃん基準に考えてしまう私も大概だけれど。
「美鈴ー!どこー?」
そうしているうちに愛子の声が聞こえた。私が待っていると言ったところから離れてしまったから、行方が分からなくなっているらしい。
「あ。じゃぁ私、友達が呼んでるんで行きます。では、また」
ぺこりと頭を下げると、私は愛子の元へと走った。背中には女の先輩たちの「美鈴ちゃんまたね~」という明るい声が投げかけられる。
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