第6話 独占欲(6)

 それにしても綺麗な先輩ばかりだった。ただの女の友達なのかどうか分からないけれど、気さくに笑いかけてるちい兄ちゃんを見るだけで胸が張り裂けそうだった。彼女とか連れてきた日には、私はどうなってしまうんだろう。

 

「ごめんね美鈴。待たせちゃったね。早く教室戻ってお昼ごはん食べよ」

「うん」

 

 何も知らない愛子は、ただ笑っていた。今この笑顔に救われる。私は今を楽しめばいいんだって安心できるんだ。

 

 いつかはちい兄ちゃん以外の人を好きになる日が来るのだろうか。そんなの考えられない。今までちい兄ちゃんしか好きになったことがないんだもん。

 

 教室へと着くと愛子と机を正面同士でくっつき合わせて向かい合ってお弁当を広げる。愛子はなんとか二つのパンを買えたようで、コロッケパンとメロンパンを机の上に広げている。私はお母さんお手製のお弁当だ。

 

 卵焼きに箸を伸ばしてそれを口に放り込んだタイミングで、ブレザーのポケットに入れている携帯が震えた。メールの受信を知らせている。誰からだろうと思って徐に携帯を取り出し、二つ折りになっているそれをぱかっと開く。

 

 液晶画面に表示されていたのは、「受信メール ちい兄ちゃん」という文字だった。思わず目玉が飛び出そうになる。

 

 え?ちい兄ちゃんから?何だろう……。さっきのこともあるから、ざわざわと胸が落ち着かない。震える手で受信BOXを開いて見てみる。

 

 俺、柏木隼人(*^口^*)金髪ツンツンのやつね♪

 河原に美鈴ちゃんのアドレス教えて欲しいって頼んだら本人に聞けって言われたから河原の携帯借りたんだ☆

 アドレス、教えてくんねぇ???

 

 思わずぽろっと口から卵焼きが転げ落ちた。あの人柏木隼人かしわぎはやとっていう名前だったんだ。アドレスかぁ。見ず知らずの人に教えるのは気がひけるなぁ。それにまたあの時と同じ繰り返しになりそうだし。だからと言って断りのメールを打って理由を追求されるのも嫌だしなぁ。

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