第3話 独占欲(3)

 愛子のくりくりとしたつぶらな瞳で見つめられると、胸がきゅうっと狭くなる。同じ女子の私でもこうなるんだから、男子だともっとたまらなくなるだろう。ゆるくパーマが当てられた茶色のふわふわの髪の毛も、愛子にとてもよく似合っている。

 

「いやいや、そんなこと言うけど、美鈴の方がすっごいモテるんだからね?美鈴の顔面に男子なんて秒殺だからね?」

「それは大袈裟でしょ」

 

 適当にあしらう私に、愛子は「もー!」と両頬を膨らませた。その仕草も小動物的で本当に可愛い。

 

 愛子は私がモテると言ってくれたけれど、そんなことは言われなくても自覚している。中学の時なんて、それを利用しまくっていた。自分が最低な人間だということは私自身がよく理解しているけれど、中学の頃のことを思い出すと人知れず暗い気持ちになる。消したいと思っても消せない過去。一体どれだけの人を傷付けたんだろう。

 

 朝のチャイムが鳴ると、担任が教室へとやってきてホームルームが始まった。連絡事項の確認が行われる。今日は特段何か行事ごとがあるわけじゃないから、頬杖をついて窓の外を眺める。遅刻をしたのか、門のところで生活指導の教師に捕まってる生徒が数人居た。

 

 ちい兄ちゃんも今頃、教室でホームルームを受けているのかな。どんな顔して先生の話を聞いているのかな。こんなことを考える私は、変態なのかな?

 

 だって学校でのちい兄ちゃんの噂は、とにかくカッコイイっていう評判しか聞かない。誰に告白されただとか、誰と付き合ってるだとかという話が全く聞こえてこないのだ。あんなにカッコイイんだから、一つぐらいあるはずなのに。だから言って、誰かと付き合ってるっていう噂は聞きたくない。ちい兄ちゃんが誰かと良い感じという話を聞こうものなら、妹の特権を使って全力で阻止したい。

 

 

 

 

 

 お昼休みになると、私は愛子と一緒に購買へと向かった。私はお弁当を持って来ていたけれど、愛子が持ってきていなかったからだ。なんと家に忘れてしまったらしい。

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