プロローグ
――
~『日本後紀』より
◆
かの
世、平らにして人民、和やかになり――と。
かくしてその都が築かれたのは隣国・唐は
北東を鬼門――、そこには延暦寺・日吉大社・貴船神社・鞍馬寺を要し、南西の裏鬼門には石清水八幡宮を配して魔の侵入を封じ、中央を南北に走る朱雀大路によって左京・右京に二分し、北部中央に
さらに都は縦横に
なれど――一見、
そして、人の心の奥底にもまた――。
そんな王都を、その
「今に王都は、
法師が握る
法師はそれを見届けて、
暮れ六つ――、かの青年は
この
人はそれを、
しかし彼もまた、そんな異界の地に半分足を入れているような存在であった。ゆえに、かの青年を知る者は彼のことをこう呼ぶ。
――またか。
朱雀大路を左から北へと進み、一条大路に出たところで青年の歩は止まった。
そこに頭に角、口に牙と鬼の姿はかくあるべきという手本のようなモノが
思わず
普通の人間ならば腰を抜かしているだろうが、彼は
はっきりいえば、異界のモノと出くわす確率は他の人間よりは多いだろう。
「そこを退いてくれるとありがたいんだが……?」
『
「殺生石……?」
『アレは
鬼はどうやら、青年がどこの誰か知っていた。知った上で警告してきた。
だが晴明には、殺生石とはどのようなものなのか、
危険なモノであることは間違いなさそうだが、どこにあるのかさえ不明だ。
占えば少しはわかるだろうが。
陰陽師――、星を読み、吉凶を
今さらながら、
それは晴明が陰陽師ゆえというよりも、妖の血を半分引いているからなのか。
なれど、かく人の世も厄介。
恨みに
人を生かすも殺すも、
晴明を、陰陽師の道に誘った師はそう言った。
ただでさえ、異界に近い晴明が人を呪う能力を駆使すれば、それは妖と一緒。
人の負の念を、得て人を狩る彼らと――。
それにしても――。
晴明はこれからまた、何か起きそうな予感がしてならない。
彼のこうした
陰陽師という職を
そしてそこには小さな鬼が二匹、晴明と目が合った途端、逃げようとし始めた。
どうやらやらかしたのは、彼らのようだ。
『同居のよしみで、見逃してくれよぉ』
「勝手に
晴明は鬼をぽいっと、庭に
『あぁっ、捨てたな!? 捨てただろう!?』
鬼は不服そうだが、晴明は無視をして室の片付けを始めた。広い邸内に晴明以外の人間はいない。昔から邸に棲み着いている
雑鬼はいても命に関わるような害はないが、祓ってもすぐに入り込んでは棲み着くため、今や放置している。それを同意と受けとったのか、雑鬼は陰陽師の邸と知りつつ棲み着き、たまに目の前に現れてはこの有様だ。
片付け終えると不意に、一羽の
『晴明さま、
鷺はどうやら師が放った〝
ほらな――と、晴明は思った。
さっそく、
このとき――晴明の新たな戦いが始まろうとしていた。
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