Change Blossom Final
朱ねこ
光の使者再び
ブロッサムである私がチェリー王国を救った暁に、崩れかかったお城では宴会が行われた。
キッチンは無事だったのだろうか。横長のテーブルに豪華な食事が並んでいる。
「朔の夜に国王様と王女様が外出されたのは、爆音が聞こえて民が心配だったからということなんですね?」
「そうなんじゃプー」
机を挟んだ対面には小さなぬいぐるみが二匹。二匹ともくるんとした巻き毛が特徴的だ。
力の抜ける語尾をつけるこのぬいぐるみはこの国の王様らしい。
「やさしいんですね」
しかし、チェリー王国の妖精たちは光のない夜に屋内から出ることを昔から禁じられている。充満された闇の力により妖精たちは巨大化し理性を失い狂暴化してしまうからだ。
それを身をもって知ったため大人しく城内で朝を待った方が良かったのだろうと思う。
「流石は国王様たちポメ。ちゃんとした理由があったポメ」
私の隣でふんぞり返っている犬のぬいぐるみは、国王様たちとはデザインが違う。
「私たちが言い伝えを軽んじたせいでブロッサムを召喚することになってしまい申し訳ないプー」
「チェリー王国を助けてくださりありがとうございますドル」
とりあえず失礼なことを言わぬよう二匹の語尾は無視しておいた。
「それにしても、でかぶつ筋肉マッチョがこんな可愛らしい見た目だったとは……」
「国王様たちに失礼ポメ!」
「あっ」
内心で独り言ちたつもりが声に出てしまったようだ。
談笑を楽しみ食事に満足した後で、光の使者に元いた世界へ送ってもらうことにした。もちろん、ブロッサムにチェンジするための小道具は返した。
「ブロッサム、ありがとうポメ」
珍しくデレた光の使者に別れの挨拶をし、既視感のある眩しい光に瞼を閉じた。
次に周りを見ると、普段立ち寄る本屋だった。
足元に落ちていた鞄をまさぐり財布の中身を急いで確認する。
「あったぁ……!!」
ずっと気がかりだった財布が無事だった。財布に頬ずりをして歓喜する。
お小遣いとは高校生にとって大変重要なものなのだ。
やっと戦いを終え、愛しの我が家に帰ってきた。一つ気になったことは、こっちの時間はほとんど進んでなかったことだ。
玄関まで出迎えてくれたお母さんに思わず目が潤み抱き着いた。
私の平穏が戻り、一週間が経った。
いつも通り高校の帰り道本屋に寄る。漫画や小説コーナーを物色していると、私の手にはタイトルのない本があった。
嫌な予感がして本棚に戻そうとするが、もう遅かった。
本から放たれた光が落ち着くと、顔にふさふさしたものがある。
「苦しいポメ!!」
私のせいではないのに頭をぽかりと殴られた。
多量の毛で窒息しないようそれを両手で持ち上げる。
「もうっ! またあなた!?」
「チェリー王国が大変なんだポメ!」
せっかく家に帰ってこれたのに……!
「今度はなに!?」
「王女様グッズが届くのを待ちきれずに国王様が新月の夜に外出してしまったんだポメ!」
「はあ!? そんな言い訳ありえな~い!」
私を元の世界に帰して……!
Change Blossom Final 朱ねこ @akairo200003
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