第47話 黒き竜と波を統べる蛇の王
「レイア様。1つ質問よろしいでしょうか?」
ルーエの邸宅。ルーエとレイアは向かい合って座っている。
ルーエは長い間、物語を読んで思っていた疑問をレイアにぶつける。
「良い。」
「私の知る物語では、闇の邪竜…恐らくは黒き竜のことだと思うのですが、レイア様の話では全く邪竜とは感じませんでした。」
「ふむ。」
「ただ、その闇の邪竜がアランストラ湖に
降り立ち、砂漠化したと聞いています。」
「ふむ…ある意味正しいな。」
「その黒き竜は邪悪な存在だったのでしょうか?」
「どうであろうな。人間たちにしか分からぬだろう。」
「黒き竜と妖魔グラグバイリストニはどうなったのですか?」
「黒き竜は妖魔グラグバイリストニを討つべく、飛び立とうとする。」
『黒き竜の王よ。』
『いかがいたした?』
『妖魔グラグバイリストニは討つことは出来ませぬ。それは、偉大な
黒き竜の王であってもです。』
『…我を侮るか、小僧。』
『そうではありません、黒き竜の王よ。
かの妖魔は憑代が危なくなると、
憑依相手を次々と変えてしまいます。』
『…ふむ。』
『憑代に固定させて、その憑代ごと滅ぼす
ことしか出来ませぬ。そうでなければ、
黒き竜の王に取り憑く可能性もございます。』
『我がそんな失態など…』
『もちろんです。ですが、万に一でも逃したり、
貴方様に取り憑こうものなら…』
『…確かにな。』
『私ならば、かの妖魔を憑代に固定することが出来ます。』
『…ほう…?…では、なぜ捕り逃がしたのだ?』
『…私と妻…波を統べる
駆け落ち同然に蒼き龍の眷属から逃れていた私たちは、この妖魔を捕えることで、波を統べる
『…ほう。』
『…ですが、土壇場で妖魔を捕り逃し、奴は私に取り憑きました。』
『…確か、そこで波を統べる
『妖魔を捕り逃がした私たちは、かねてから、私たちのどちらかに妖魔が取り憑いたときは妖魔を固定し、討ち果たす所存でした。もうこれで逃れられないように。
案の定、妖魔は私に取り憑き、私は妻に私もろとも妖魔を討つように言いました。
しかし……』
『…妻は、私ごと妖魔を討つことが出来ませんでした。』
『ふむ。』
『そこに現れたのが、波を統べる
怒りの余り、私に襲いかかった、波を統べる
『ふむ。』
『妻の無念を晴らしたいのです。私は、妻亡き後、のうのうと生きているつもりはありません。仇である妖魔グラグバイリストニを討てるのであれば、この命果てようとも決して悔いはございませぬ。』
『ふむ…仇討ちのために我を利用したい、と?』
『……申し訳ありません。…ですが、私にはもう生きている意義や資格など無いのです。あの妖魔さえ討てれば…』
「その黒髪の若者は、涙しながら黒き竜に訴えた。」
「黒き竜は、蒼き竜に遣いを出し、波を統べる
黒き竜は、決着をつけるためにアランストラ湖に降り立った。
無論、その若者を懐に隠して。」
「…激しい戦いは2日2晩続いた。
闇魔術を得意とする黒き竜の魔術は妖魔グラグバイリストニの闇魔術障壁によってかき消され、妖魔が取り憑いた波を統べる
しかし、黒き竜の”深遠の息吹”や妖魔の”
「大陸の6大竜王の実力を持つ黒き竜の方が優勢になりつつあった。
しかし、このまま討ち倒しては、妖魔が黒き竜に取り憑いてしまう可能性がある。
事実、妖魔グラグバイリストニは憑代が瀕死になれば、瀕死にさせた相手に取り憑くことが出来る能力を持っていたのだ。」
「黒髪の若者が、波を統べる
『…さぁ、黒き竜の王よ!
私もろともこの妖魔を地上から消し去ってくださりませ!』
『…若者よ、本当にそれで良いのか?』
『…私の意識があるうちに早く!
私はもう持ちません。
陰腹を切り、余命はいくばくもございませぬ。
止めを刺さなければ、妖魔は自身を実体化し逃れてしまうでしょう。』
『分かった。若者よ。そなたのことは忘れぬ。』
『願わくば、私の包みの中にある、小さな石を貴方様に抱いて頂ければ…』
『その望み、叶えよう』
「黒き竜が自身の最大の息吹”深遠の淵からの
若者と憑依した妖魔に放ち、その戦いは終わりを告げた。
辺り一面は
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