第46話 漆黒の黄泉へ誘う術

「誠か…?」

「はい。」

クォスは冷静になるように努める。


「どのくらいの時間が必要になる?」

もし、膨大な時間が必要になるのであれば、どんな手を用いてでも、この青年を我が領地に連れて行かねばならない。

それこそ、拐かしてでも。


「クォス様の術式解除であれば、触媒が自宅にあります故、30分もかからぬと思います。」


唖然とするクォス。

長年苦しめられたこの呪いが僅かな時間で解呪出来る?

信じられる訳が無い。

しかし、この青年が嘘をついているようにも見えない。


絞り出すようにクォス。

「従者に取りに行かせよう。幸い、アクアは寝ている故、アクアにもかかっている儂と同じような呪いの紋様を診ては貰えぬだろうか?」


アリールは黙って頷く。


「ラダカン!」

クォスは扉の外で控えて居るであろう筆頭執事を呼ぶ。

畏まったラダカンが入室する。

「アリール殿の自宅へ遣いを出せ。

アリール殿、済まぬがアクアを診る前に遣いに

触媒のことを伝達してやってくれ。」

「分かりました。」

「済まぬ。いざとなれば儂よりも、アクアと我が領地にいる息子の呪いを何とかしてやって欲しいのだ。」

父の愛なのだろう。


ここまで紋様が大きくなれば、痛みや苦しさはかなりのものの筈だが、クォスは自分よりも息子たちを何とかして欲しいと願っている。

ましてやアリールにとっても、アクアは大切なクラスの一員だ。

アリールに異存は無かった。

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