第42話 レイア

ルーエの頭の中に疑問が過る。

確か、育ての親は迷宮の奥から出られないと、アリールは言っていた。

にも関わらず、レイアと名乗る女性はアリールの親と称してグリムワール帝国大学の図書室に来ている。

また、見るからに親とは言えないような風貌。

どちらかと言えば姉にしか見えなかった。


竜の一族…

アリールはそう言っていた。

アリールの言葉が確かならば、レイアは竜の一族である。

ミシエル御大も言っていた「レイア」

決して人間とは思えない。

ただ、その竜の一族が竜の化身なのか、半竜半人の亜人なのかは、ルーエには判断がつかない。

目の前の黒髪美女レイアは外見上は人間にしか見えない。

しかしながら不思議な雰囲気は人間であれば達人の域に達しているような不思議な雰囲気を纏っている。


「アリール君に会いに来られたのですか?」

ルーエは遠巻きにレイアの真意を図ろうとする。


「…そうだな。アリールがどれほど上達したのかは気にはなる。」

レイアは少し含みのある微笑を浮かべて返答をする。


「アリール君は、次に起こる『大災害』を防ぐために大学に来たと言ってましたが、それは本当ですか?」

ルーエは気になっていた『大災害』について、レイアに尋ねてみる。

昔話にもある、邪竜が舞い降りて人々に不幸を撒き散らすような大災害。


レイアは少しだけ眉を吊り上げて、ルーエの瞳を覗き込むようにこちらを見ている。

「さてな。アリール次第であろう。」

レイアは肯定とも否定とも言えない返答をする。


「大災害は起こるのですか?」

「それは今際の者ども次第であろう。今際の者どもが、自然をないがしろにし、己の利欲のためだけに生きるのであれば起こるやも知れぬ」

「大災害を未然に防ぐには何をすれば良いのですか?」

「それは我にも分からぬ。」

レイアは持っていた本を本棚に戻して、その本の背表紙を指でなぞった。

『闇の邪竜の降臨』

「この本は面白いな。今際の者どもには、あの出来事がこう映っていたのだな。」

レイアは含み笑いをする。

「あの出来事…?」

「ここで長話もな。良ければアリールの所に連れ立ってくれぬか?」

もちろんルーエに是非も無い。

ただ、その後起きる出来事をこのときのルーエは想像もしてはいなかった。








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