第34話 ルーエの暗澹
アリールとアクアがアリール邸で歓談している頃、ルーエは第1研究室でアラインから次週に行われる晩餐会にアリールが招かれていることを告げられていた。
「ああ、それと、」
まだ何かあるのか?
ルーエはスケベ上司が自分とアリールをくっつけたがっていることを知っていたから、そのことだろうと疑ってかかる。
「エドガー団長がアリール君を騎士団に入れたいらしい。」
「はい?」
「どうやら、アリール君はかなり気に入られたようだな。自分の娘婿に!とも言っていたそうだぞ。」
アラインは涼しい顔をして、ルーエを見やる。
娘婿って、エドガー団長の娘さんって確か8歳…どれだけ気が早いのか。
ルーエは少しだけ暗澹たる思いになる。アリールの実年齢が分からないが、もし18だとしたら、18と8も、28と18もそう変わりはしない。しかし自分の場合は女側が28なのだ。
アリールが騎士団に入るとは到底思えないが妻を持つとしたら、断然若い方が有利だ。年齢、という自分ではどうしようも無い部分で大きな壁が出来ているように感じる。
(踏み込みが過ぎたか)
アラインはそんなルーエを見て独り言ちる。
ルーエが焦りからより過激な行動を目論んでくれはしないか、と期待していたのだが、思ったより根が深いと見える。
アリールを引き止められるならルーエでなくとも構わないと思っているから、カリナ=ブルームやサーシャ=スミルノフを女中としてアリールの元に送りこんでいるのだが、万に一、騎士団に引き抜かれでもしたら、手駒としてアリールを使うことが難しくなる。騎士団は騎士団で脳筋マッスル集団だから面倒なことこの上ない。
(今はまだ様子を見ていく他あるまいよ)
今はまだ限られた手段で接近していく他ないが、他者に先んじられる前に何らかの方策は考えねばなるまい。アリールを篭絡する方策を思い巡らすアラインであった。
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