第31話 エドガーの関心

「ミラ!そこまでだ!」

アルレイアが合図する。

程なく、3体の魔物は姿を消し入口から神殿長ミラ=ツヴァイが姿を現す。

「ご苦労だったな、ミラ。レオナルド。それと、Pr-Aの面々も。」

アルレイアが簡単に皆を労う。


「どこで気づいた?」

アルレイアがアリールの顔を覗きこみながら尋ねる。

アリールは傅いて騎士礼をとる。

「堅苦しくなくていい。どこで気づいた?」

「ここが修練場であることと3体の魔物の組み合わせで気づきました。」

アリールが頭を上げて答える。

「ふむ。分かるように説明しろ。」

「修練場は『紫色の澱水晶』があります。皇帝陛下の御命を狙うには不自然です。」

紫色の澱水晶は生命力を超えるダメージは精神力へのダメージに変換され、昏倒はするが死亡したりはしない神器。明らかに襲撃には不向きの場所だ。

「次に3体の魔物はそれぞれ徒党は組みません。魔狼グレイウルフ灰熊アッシュベアは天敵の間柄であり、そもそも霧霊ガストは生命体を襲います。」

「…ふむ。」

「もし、本物だとしても放っておけば同士討ちが始まり、何のための襲撃か分かりません。」

(よくこの短時間でそれに気付ける。そもそもそんなことを知る由も無い者が多かろうに。)

アルレイアは目の前の黒髪の青年に感心する。


「陛下。私からも質問をしてよろしいですか?」

エドガーがアルレイアに近づき許可を請う。黙って頷くアルレイア。

「アリール君。君は『教室後方で待機を』と言ったな。なぜだ?」

「…もし、この襲撃が万が一本物だとしたら、襲撃者は扉のすぐ近くで陛下を狙うと考えました。」

「ほう。なぜだ?」

「混乱状態に乗じる方が成功率も逃走率も格段に良くなるからです。」

(完璧だな、この青年。)

エドガーは深く感心する。

ぜひとも騎士団に欲しい。何なら中隊長待遇でも構わない。

この青年を手元に置いておきたいと強く思う。

アライン侯やミシエル御大の覚えも良く、アルレイアにも感心されたこの青年。

しかも相当の手練れだと聞く。自分の娘はまだ幼いが、本人が良ければ娘婿にとってもいい。

(アライン侯が目をかける訳だ…)

器が違う。


「よし、もういい。…陛下。そろそろ時間です。」

エドガーは会話を切り替えて、皇帝アルレイアに向き直って促す。

「では、ここで解散だ、Pr-Aの諸君。本日はご苦労だった。帰って休め。」

エドガーが宣言し、皇帝陛下の大学視察は終了した。

(さて…これから忙しくなる。)

エドガーは皇帝アルレイアの護衛に付きながら、方策を考える。

アリールを騎士団に入れるためならば、些少の苦労は厭わないとも。


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