第30話 計画された襲撃
一行は大学修練場に到着する。
修練場で待ち構えていたPr-A担任レオナルド=ロドリゲスが皇帝に恭しく一礼する。
「ここか。なるほど。」
『紫色の澱水晶』が安置されている修練場。
皇帝アルレイアは護衛の騎士たちに囲まれて、修練場に踏み入った。
「ここで鍛錬するのだな?」
護衛を下がらせて修練台に上る。
腰に下げていた剣を抜いて、2歩3歩とステップを踏む。
アルレイアは御歳17。歳相応の少女に見えない剣舞を披露する。
洗練された皇帝の剣舞。
天性の資質もあるのだろう。
恐らくは実戦でも相当やれるはずだ。
剣舞が終わり、アルレイアは修練台から降りていった。
その時、アルレイアは修練場入口に立つミラに気付き、目配せをした。
(エドガー、レオナルド、いくよ!)
ミラはエドガーとレオナルドに目で合図しながら、手元から3枚の紙を取り出し床に投げる。
と、同時に自らは修練場を出て「
みるみる内に紙は獣の形に変化する。あるものは
(ふふ。気付かねばなるまいよ。)
ミラは妖艶に笑みを浮かべる。今年の子たちはどう頑張ってくれるんだろう?
「敵襲だ!!」
誰かが声高に叫ぶ。
3体の魔物が修練場の入口付近からゆっくりと近づいてくる。
「陛下!こちらへ!」
エドガーは護衛騎士たちと共に皇帝アルレイアの元で素早く円陣を組む。
「サーズとライサは
レオナルドが素早く指示を出す。
「皇帝陛下が脱する時間を稼げ!」
エドガーがPr-Aの面々に激を飛ばしていた。
「何でこんなところに!!」
サーズが吐き捨てるように怒鳴る。
「ちょっと洒落にならないじゃん!!」
ティルも同調する。
アリールは…何か引っかかるものを感じたのか、アクアの傍に近づき小声で何か呟いた。
アクアの目が見開き、魔術の詠唱が始まる。と、同時にアリールは修練台の反対側にいるエドガーたち、護衛騎士の元に走り出した。
その間にもゆっくりと近づいてくる3体の魔物。
アリールはエドガーの元に辿り着くと、エドガーに耳打ち。エドガーの返答を待って再び詠唱しているアクアの元に走り出す。
アルレイアはその様子を興味深そうに見ていた。
エドガーがアルレイアに耳打ちする。
「あの黒髪の青年ですが。騎士団に欲しいのですが、如何ですかね?」
「どういうことだ?」
「いえ、先ほどあの青年が、『あの
「ほう。ということは訓練だと分かったということか?」
「『好きにしろ』と返答しました。」
エドガーは少しだけ笑みをこぼして、僅か数秒で訓練だと看破した青年を見る。
青年は詠唱しているアクアの元に戻り、詠唱の完成までアクアを護るようだ。
アクアの詠唱が完成する。
エドガーは水魔術が得意なビリニュス家次男がどんな魔法を唱えるのか注目していた。本物の
アクアから笑みが零れ、大声で叫ぶ。
「皆!ここは修練場だ!」
「………あ、そっか!!!」
ティルは理解したようだ。
ライサもアクアの詠唱と呼びかけで全てを理解する。
ライサの詠唱が開始された。
「エドガー団長!皇帝閣下を連れて後方に待機していてください!」
アリールは3体の魔物と対峙しながら修練場の後方を指差す。
「ふふ。してやられたな。」
アルレイアは思わず笑みを浮かべる。
「そうですね。修練場で襲撃する馬鹿は情報に疎い馬鹿者ですからな。」
エドガーも笑みで返す。
「あのビリニュス家の次男もなかなかやってくれる。」
「ほう。陛下はビリニュスの次男が唱えた魔術が何か分かったのですかな?」
「鑑定だよ。魔物は鑑定出来ないが、
じりじりと3体の魔物は近づいて来る。
近づいては来るが歩みが遅い。まるで、魔術を撃ってこい、攻撃をしてこい、と言うように。
Pr-Aの面々は対峙しながらも、術者の術中にはまらないように先攻しない。
ライサの詠唱が完成した。やはり魔法陣は発生しない。
「…術者を探して!近くに居るはず!」
ライサが大きく叫んだところで、アルレイアはこの茶番を止めた。
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