第7話 入学
連日のようにミシエルやアラインからの呼び出しで自分の知識を披露していたアリールが、とうとうグリムワール帝国大学に入学の運びになった。
中途で入学するよりも、目立たぬように新年度の新入生として入学する方が良いじゃろう、とミシエルから助言され、約2ヶ月待って入学式を迎える。
大学入学試験があったらしいが、アラインが試験するに及ばない、ということでアリールの試験は免除になっている。
「似合っているじゃない。」
ルーエがアリールの帝国大学制服を見て、感想を言う。アリールの背格好は新年度生に比べ若干高い。年齢は分からないが、だいたい20歳前後だろうアリールは制服に身を包むと初々しい感じがしてなかなか良い。
「そうですか?なら良かったです。」
笑顔の不意打ちを食らう。ルーエはやや顔を紅くしながら、似合ってる、と目を伏せがちに言う。やや消え入るような声になったのは不意打ちのせいだ。
「入学式は講堂で行うんでしたよね?」
アリールが準備をしながらルーエに聞く。身分証明書にはヴァイス=アリールと名が書かれている。身元保証人はミシエルであるが、出自はヴァイス家の方が都合が良いだろう、とのことだったので、ルーエの遠い親戚筋ということに落ち着いた。
「さぁ行きましょうか。」
ルーエがアリールの手を取って家の扉を開こうとする。後ろでは2人の女中がいってらっしゃいませ、と声をかけていた。
グリムワール帝国大学講堂。
アリールは下級貴族の座る座席に座っていた。
ヴァイス家は北方辺境を守護するノーザンテリトリー辺境伯の家列の一員であり、子爵であるため、お世辞にも偉いとは言えないのだがルーエの魔導師としての活躍もあり、他家からは一目置かれている。
そのヴァイス家から今年入学する青年が居るということで、帝国大学の他の教師からは注目されていた。
「あの子が遠い親戚筋のお子さんですか?」
ルーエに同僚の一人が尋ねる。
アリールの見た目は制服の効果も相まって初々しい新入生のように見えている。
「ええ。なかなかの遣い手ですよ。」
ルーエは微笑みながら応える。
アリールの持つ独自のスキルは大学では使うことを禁止しているが4大魔法もそれなりに使えることが分かっている。そこら辺の魔導師ならば余裕で相手出来るだろう。
「ほうほう。それは楽しみですな。」
ルーエは笑顔で返す。
「そろそろ始まる頃合いですかな。」
壇上にはアライン=メーナスが登壇し、入学式が始まろうとしていた。
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