第6話 ルーエの心情
面会からおよそ1ヶ月。
激動だったこの1ヶ月を振り返ってみてもルーエにとって不遜と驚愕の連続であった。
まずアリールという人とも魔とも知れない、素性の分からない人物との同居。これはアライン、ミシエルは元より遠方の父母兄までもが自分を説得しにやって来てほとほと参っていたところに皇帝陛下の弟君まで来る惨状。
ルーエお姉ちゃん、嫌だったら無理しなくて良いんだけど…と実兄であるワーズ=ヴァイスと同じことを10歳に満たない陛下の弟君にまで言われたら、これはもう無理というか、無理と言えないというか…
もちろん、アリールに対しては通常の男どもに比べたら柔和で優しくそれなりに整った風貌で好ましく思えるけれど、
(それとこれとは話が違うでしょうが…)
私、今年で29になるんですけど…と完全に自虐の域に達している。若い頃はそれなりにモテていたルーエであるが、今は完全に行き遅れの感がある。研究に没頭したツケとも言うべきか。
しかしそれにしても、若い男女が一つ屋根の下で暮らすとか、何かあったらどうするつもりなのか?と思っていたが、上の面々はそれも込みで期待している節がある。
(これって人柱みたいなものよね?)
28にもなりながら、その方面では完全に出遅れているルーエは少し顔を紅潮させて憤慨する。
(でも、あれかな?結婚とかしてたらこんな感じなんだろうか?)
顔が一層紅くなっていくのが分かる。自分で思っている以上に自分が初心だと言うことに少しだけ恥じらいを覚える。
アリールと同居するに当たり、帝国からは屋敷を1つと身の世話をする女中を2人貸し出された。今まで狭い部屋に研究室に近いから、という理由だけで住んでいたときと比べ、格段に生活レベルは向上している。真っ当な食事と睡眠。思ったよりザンネンな女性だったルーエにとって見れば至れり尽くせりの待遇である。
(女中も騎士爵の娘さんたちよね…確か…)
家事全般も卒なくこなし、料理の腕も申し分ない。恐らくは花嫁修業をしていただろう2人ともが男なら放っておかないレベルの容姿を伴っていた。
(ハニトラ要員って訳では無いかも知れないけど、帝国としてはこのまま居着いて欲しい訳よね。)
素性はまだ分からない部分があるが、真摯であり嘘偽り無い真面目な人柄も他人を惹きつける魅力がある。
(上の面々が何を考えているか分からないけど…)
もし、アリールとそういうことになるんだったら、それでも良いかな、とルーエは紅い顔のまま考えていた。
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