オレ、転生したの!?

かがみ透

オレ、転生したの!?

 目を覚ましたオレは、ゆっくりと起き上がってみた。

 妙に身体が重いな。


「……ここは……?」


「神の神殿だ」


 知らないじいさんの声だ。

 フード付きマントを羽織っていて、白髪、西洋人ぽく見える。

 落ち着いていて、威厳が感じられる。


「マっ!? なんで!?」


「ダイキ、お主は転生したんじゃよ」


 大輝ダイキ。オレの名前だ。知ってたんだ? やっぱ神だから?


「なにっ!? 一体なにが起きてるんだ? オレ、死んだの!? トラックに轢かれたとか、運悪く上から鉢植えかなんかが落ちてきたとか!?」


「あー、それは——」


「あ、いや、やっぱ待ってください。なんで死んだかなんて聞くのこえーし」


「ほんの手違いなんじゃ」


「はい、出たー、『手違い』!」


 そのワードに安心して、途端に鬼の首を取ったかのように態度がデカくなるオレ。


「よくあるよなー、神様が間違えて死なせちゃったってやつ? 『詫び石』とかくれんの?」


「い、石とは何のことかね?」


「チッ、詫び石も用意してねぇのかよ、ったく、シケてんなぁ」


「なぜワシが詫びなければならないんじゃ?」


「え、だって、あんたの手違いでオレが死んだんでしょ?」


「そ、そんなことは、断じて、ない! ワシは悪くない!」


「えー、じゃあ、誰のミスでオレが死んだの?」


「それは、お、お主じゃ!」


「は?」


「そのう、あれじゃ! お主がゲームばっかしておるから、バチが当たったんじゃよ」


「ん? さっき『ほんの手違い』って、いかにもそっちのミスみたいなこと言ってたよねぇ?」


 じいさんは、だらだらと額から汗を流していた。


「いや、ワシのミスではない。そもそも……おっと、こんなことを話している時間はない! 今ならまだ間に合う! 元の世界に生きて帰りたければ、悪いドラゴンを退治して、この世界の英雄になるのじゃ! そうすれば願いが叶うシステムじゃ!」


「そっか! 急がないといけないんだな! じゃあ、さっさとチート武器とチート技とチート装備をくれ」


***


「おい。悪いドラゴンに勝てなかったぞ」


 命からがら逃げてきたオレは、なんとか神殿にたどり着いた。

 さっきの老人がスッと現れる。


「どうしてくれるんだよ、神様、オレ、もう元の世界に帰れないのかよ?」


「ワシは、そもそも神ではない」


「はあっ!?」


「だが、もう一度チャンスをやろう」


「神じゃないのにそんなこと出来るの!?」


「伝説の武器と装備をやろう」


「そんなのあるんだったら、さっさと出せよ!」


「お主がどんなヤツかもわからぬのに、伝説の武器は渡せんじゃろ」


「そ、それはそうだけどさ」


「壊さないとも限らぬし」


「え? そんなに脆いの?」


「本当にこの世界を救ってくれるか? お主が帰りたいと思う真剣な気持ちがこの世界を救うことにもつながるんじゃ」


 じいさんの青い瞳は真剣だった。


 そっか、オレ、試されてたのかな。さっきから横柄な態度で、武器とか装備をあてにするばっかで……それじゃ信用されなくて当たり前だったかもな……。


「わかったよ、神様だか違うんだかわかんないじいさん。俺が元の世界に帰るのとこの世界を救うことが同じなら、頑張れるかも」


「行け、勇者よ!」

「おう! 今度こそ本気出して戦ってくるぜ!」


 黒光りしてる鱗に、コウモリみたいな巨大な翼、トゲトゲした背びれ、金色に光る爬虫類みたいな鋭い目、またこいつと戦うのか!


 オレの鎧の音に気付いたドラゴンが、こっちを見て雄叫びをあげた。

 ワニみたいにびっしり並んだ牙、口から炎を吹き出した!


 さっきの恐怖がよみがえる!


 だが、伝説の盾はいとも簡単に炎を跳ね返す。

 さっきの装備とは全然違う!


 いける! 剣の威力は、ここに来るまでの間に雑魚敵で確認済みだ。

 これならあのドラゴンを倒せる!


「ぅおおおおおお!」


***


「そうやってオレは、苦戦しながらも、なんとか悪いドラゴンを伝説の剣でぶった斬って倒したんです。神様は、オレの働きを認め、世界を救ってくれたご褒美に現世に戻してくれたんです」


「ほう」


「一回目でドラゴンを倒せたらもっと早く戻って来られたんですけど、手こずっちゃって。でも、オレだって倒したときは瀕死の状態で、また死ぬんじゃないかって思ったんですけど、女神が治してくれて」


「女神?」


「ああ、そうっす。その女神がリカバリーの技をかけてくれてるのに時間がかかっちゃって、ドラゴンとの戦いが長引いちゃって」


「ほう?」


「だいたい、最初に出てきた神様が妙に言い訳がましくて。あそこでも時間食っちゃって。オレは急いでるって何度も言ったんですけどね」


「……つまり、お前は夢の中で戦ってきた、と?」


「いや、夢じゃないですよ、本当にその時間は転生してて……今話したでしょ?」


「それが遅刻の言い訳か?」


 担任が呆れたようにオレを見てる。


「……やっぱダメ……ですかね?」


「生徒手帳出して。大輝、五時間目に登校、遅刻」


 先生が記入した。

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オレ、転生したの!? かがみ透 @kagami-toru

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