後輩くんの事が好きすぎる先輩ちゃん

ひなみ

本文

相澤あいざわ先輩ってどうしていつも僕についてくるんですか?」

 昼休憩中の社員食堂。テーブルで向かい合った彼女に気になっていた事を聞いてみた。


「それはあれです。藤代ふじしろ君が悪さをしていないか私は監視をしています」

 彼女は僕の好物である四川風麻婆豆腐をぱくりぱくりと口にする。明らかに苦手なのが伝わるくらいにぷるぷると涙を浮かべているんだけど、一体何がしたいんだこの人。


「はぁ。僕ってそこまで信用ありませんかね」

「ありませんね」

「いや即答」


 僕から一切目を離そうとしないのも手伝って緊張感が半端ない。その結果催して椅子から立ち上がれば、

「怪しいですね。私もお付き合いします」

 などと彼女はのたまう。


「いやさすがに男子トイレまで来たらまずいと思いますよ」

「そうですよね」

 と言って引いてくれたと思いきや、やっぱりついてくる。


「もしかして、僕に何かあるんですか?」

 彼女の顔を覗き込む。

「ないですが」

 目を逸らされる。

「あれ、でも今瞳孔が大きくなりましたよ。先輩は嘘をついているのでは?」

「つつつつ、ついているはずがないでしょう!」

 明らかに動揺している。


「あ、藤代くーん!」

 同期の沢辺さわべさんが手を振ってやってきた。いつもながらに元気な声がフロアに響く。

「あれ、どうしたの?」

「いつものあれさー」


 彼女とは共通の趣味がある。それは朝の児童向けアニメの感想を語り合う事だ。だけどさすがに衆目のある社内で堂々とするわけにはいかない。


「待って、今はやめとこうか」

「またあとでって事かな? じゃあね!」

 と言って彼女は去っていった。


「今のが彼女なんですね。彼女いたのかよこのクソ野朗が」

「先輩、急に口悪くなったのどうして……」

「べーつに気にしてなんかないですけどねぇ!」


 涙目になった先輩は僕の目を覗き込む。

 これは沢辺さんとの関係を疑われているのだろうか。


「今の子は心の友的な……? 魂が繋がるフレンドみたいな」

「だったらよし」

「いやいいんだ」


「では、藤代君は私の事をどう思ってます?」

 再び僕の方を見てくる。

「え、あー……。そ、そうですね。色々気に掛けてくれるいい先輩ですかね」

「それだけですか?」


 というか、ああもう。

 本当はずっと気になってるなんて言えない。

 だって今はそれどころじゃないから。


「尿意がやばいんでこれで失礼します!」

「では私もお供しましょう」


 と言ってやっぱりついてくる。

 だからなんなんだこの人!

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後輩くんの事が好きすぎる先輩ちゃん ひなみ @hinami_yut

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