第五章

第四章の軽いまとめ

 オセアディア第二の都市にして独自の法を定められるほど高度な自治権が認められている〈デラルラニア〉にやって来た政臣と姫愛奈の二人。現状最大の敵と思われるレザエル教団の教会を襲撃するためである。敵とはいえ、何も知らない人々を攻撃するということを意識しつつ向かったその教会は、人身売買ビジネスに手を染めていた。自分たちと同等かそれ以上の悪人っぷりに驚嘆した二人は、即刻襲撃を仕掛ける。新しくアマゼレブが送ってきた眷属〈ルドラー〉を使い人身売買組織並びに教会関係者を始末していくが、政臣はその途中連れ去られた子供たちを発見する。


 子供たちを解放しようとする政臣だが、そこで教会が飼っていると思われる魔物に襲われる。(ペットの人喰いスライムを除けば)初めて魔物と遭遇した政臣は、異常な耐久性を発揮する魔物に苦戦。結果的に倒すことには成功したものの、再生能力が追い付かないほどのダメージを受け、意識を失ってしまう。


 夢か幻かも分からない世界で目覚めた政臣はそこで伯父の基臣と再会する。家族への情愛をかなぐり捨てて慕っていた基臣に政臣は心の奥に仕舞っていた気持ちを吐露し、基臣はそんな政臣を転移前と同じく慰めるも、もう元の世界には帰れないことを暗に再認識させつつ、姫愛奈を守るよう諭す。泡沫の如くはかない一瞬の再会ではあったものの、政臣は基臣の言葉に従う為現実世界へと戻っていった。


 一方、政臣と姫愛奈との間に奇妙な関係性を持つパレサ王国軍需大臣ピシュカ・ダウムは、対亜人戦争において亜人側と睨み合う前線の一つ〈マゼノ線〉にいた。物資と人的資源を消費しつつも、一向に終わる気配の無い戦争に対し、軍人出身のピシュカは複雑な気持ちを持っていた。別件でマゼノ線近くの街に来ていたオセアディア秘密警察の長官ヴィオレッタ・ギスラムは、実は戦争に無関心な日和見主義者であり、価値観は違うもののピシュカと同じく戦争に悪感情を持っていた。タバコをふかしながら交流を深める二人だったが、前線において亜人側が進軍を開始したと同時に叛乱が勃発する。長い戦争に辟易し、それでも戦争継続を唱える人間国家上層部に失望した者たちが起こしたクーデターであった。


 時を同じくして、各人間国家で同時多発的にクーデター軍が首都を制圧するという異常事態が発生する。クーデター軍は〈全種族共存連盟〉を名乗り、亜人排斥を大義名分に戦争を推し進める指導者たちを排除し、代わって亜人との共存を推進するのが目的であると宣言した。主要メンバーは各国家の反戦派や亜人共存を唱える一派だったが、その中には姫愛奈が忌み嫌う翼をはじめとした数名のクラスメイトたちが勇者としてメンバーに連なっていた。


 まさか過ぎる事態に政臣と姫愛奈の二人は対応を考えあぐねるも、クラスメイトの中心であった傑が排除されていることに着目。連盟参加を巡りクラスメイト内での内紛が起こった結果、連盟参加に反対した傑たちはどこかに拘束されてしまっているのではと推測する。戦力──もとい駒を確保するため傑たちの救出を目論む二人だが、突然二人が一時的なホームとしているデラルラニアに飛竜ワイバーンの群れが来襲する。混乱の中都市からの脱出を図る二人に対し、アマゼレブは新しい『家』を提供。襲い来るワイバーンをカトンボのように撃ち落とすその『家』は、二人のイメージをはるかに上回る巨大な空中要塞であった──。


 

 

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