第42話 肉祭りじゃーっ!!
一足先に戻ったショウくんたちは門で待っていてくれた。既にスティーブさんには報告してくれてるそうだけど、今日は領都に車では入れないという事を教えてくれた。
門からチラッと町中を覗いてみたら……
うん、酔っぱらいや食べすぎの人たちがチラホラどころかそこら中に居たよ……
「凄いな、これほどとは思ってなかったよ」
「公爵邸でも肉を庭で焼いて食べてますよ。ミコトさんが様々な焼肉のタレを作っていたんです。住人たちにもそれを配って、バーベキューセットも配って、そこら中で焼肉が……」
「もう、公爵も諦めて二日間の休日を領民に宣言したっす。今日、明日はお祭りっすね」
「大丈夫なのか? 防衛機構は機能してるのか?」
「ご覧の通り、門衛や見張り、待機している兵士や騎士たちは交代で休みとしてますから、防衛については大丈夫でしょう」
さすがはスティーブさんだ。ちゃんとその辺は考えていたんだな。俺は
「オッサン様、町中に漂うこのいい匂いは何でしょうか?」
「ああ、アルハムさん、この匂いは焼肉の匂いです。公爵邸で一緒に食べましょう」
「焼肉ですか? 初めて聞く料理ですね。でもとても美味しそうな匂いです、ジュルッ」
ヨダレを拭ってそう答えるアルハムさん。女性だが、いや女性だからこそ食欲が強いのだろう。そうだ、今のうちに聞いておこう。
「アルハムさん、
俺の問いかけに真面目な顔になったアルハムさんが答えてくれた。
「はい、私のジョブが【始竜の
そうなのか。あのナビゲーターの声をね…… 嫌味や突っ込みが多いけど落ち込まないでね、アルハムさん。
『私がいつマスターに嫌味や突っ込みを言いましたか? それよりもアルハム』
「はい、始源竜様!」
『公爵邸に着いたら貢物を要求します。私に焼肉を捧げなさい』
「畏まりました、始源竜様」
おいっ!? 食べたいなら顕現しろよ。そしたら俺が一発殴って許してやるから。
『フフフ、マスター。面白い事を言いますね。私が顕現してしまうと直ぐに邪神@?j/がやって来ますけど良いのですか?』
クッ、それは困るな…… ずっと顕現しなくて良い……
『物分りの良いマスターで良かったです。それよりも公爵邸では修羅場を覚悟しておいて下さいね』
えっ? 修羅場? 何で? 何かあるのか?
『アルハムは私の
ウォイッ!! 自分が説明に失敗したからって俺に振るなよ!!
『では、アルハム、頼みましたよ』
「はい、始源竜様の仰せのとおりに!」
いや、アルハムさん…… まあ仕方がない。取りあえずミコトの誤解を解かないとな。俺の足どりはさっきまで軽かったのだが、急に重たくなってしまった。
ゆっくりと歩く俺にショウくんが喋りかけてきた。
「オッサン、大丈夫ですよ。ミコトさんには俺からも言ってありますから。だから心配しないで下さい」
ウオーッ、ショウくん!! 何て出来た青年なんだ! 俺はたった今、ショウくんに家を一軒プレゼントすると決めたぞっ!!
現代(地球)建築の全てを注ぎ込んだ家を作って上げよう。ショウくんとマリアちゃんの住む土地が決まったら絶対に俺が作ってやるからな!
途端に俺の足どりは軽くなった。我ながら現金なものだとは思う……
公爵邸に近づくと、ちゃんと門守衛は仕事をしているし、塀の周りに警戒している騎士たちも居た。俺たちはご苦労様と言いながら中に入った。
「ダーリン、おかえりなさい」
ルーちゃんが俺を見てそう声をかけてくる。それを見たアルハムさんがちょっと引きながら俺に言った。
「オッサン様の趣味を私はとやかく言ったりはしませんので……」
「いや、アルハムさん違うから…… コイツが勝手に俺をダーリン呼ばわりしてるだけで、俺の嫁はちゃんと女性だから」
「ホッとしました」
そんなこんなで中庭にと案内される俺たち。そこには既にモアルさん、スティーブさん、その子供夫婦に孫も揃っていて、また使用人たちの半数も楽しそうに焼肉に舌鼓をうっていた。
そして、俺の脳内にミコトの妄想が届いてきた……
『結婚したばかりなのに不倫なんて…… 私は寝取られた女なのね…… そして、私は捨てられるのよ。でも大丈夫、○○○は最後には私の元に戻ってくるの。そんな女に夢中になるのは最初だけなのよ。物珍しさから夢中になってるだけで、直ぐに飽きて私の良さを分かるのよ。だって、あの黄金銃を根本まで受け入れられるのは私しか居ないんだもの…… ポッ! なんて思ってたのが勘違いだったなんて…… ナビちゃんたら説明の仕方が悪いわよ! でも一時でもこんな妄想をしたなんて、私は悪い妻だわ! ○○○を信じられなかった悪い妻。そうよ、今夜はシッカリと【お仕置き】をしてもらわないと! そうよ、目眩く官能のお仕置きを!!』
ん? 何故か誤解だったと分かってるようだな。まっ、良いか。はいはい、分かりました、ミコト。官能の渦に巻き込めば良いんだな。善処するよ。
「ただいま、ミコト。凄いな、領都中に焼肉の匂いが広がってるじゃないか。それに、タレも作ったんだって? さすがは俺の妻だ! 誇りに思うよ。あ、コチラが
俺がミコトにそう声をかけると、
「おかえりなさい! オッさん! アルハムさん、初めまして、オッさんの妻でミコトと申します。
ミコトが笑顔でそう言うと、そこにチビ竜が割り込んだ。
『うお! 冴えないオッサンの割にこんなキレイな奥さんを娶ったのか? このキレイな人はおじ専なのか?』
うん、コイツは殴ろう。そう思った俺が拳を握ったら、先にアルハムさんがチビ竜のこめかみに相当する部分に両拳を当ててグリグリし始めた。
「始竜様、オッサン様への暴言はあなた様の母上であらせられる始源竜様への暴言となります。言葉遣いには気をつけて下さいませ」
笑顔でチビ竜を見つめながら、決して手を止めないアルハムさん。
『ギャーッ、いたっ、痛い! 分かった、アルハム! 次からは気をつけるからっ!?』
うん、この威厳の無くなった
それから俺はモアルさんとスティーブさんの元にアルハムさんだけを連れて行き、これより
「竜人族がまだ生きていたとは!!」
「処刑の森の最奥でひっそりと暮らしていたとは!!」
そう言った後に、
「オッサン殿の保護化に入られるならば安心だ。コレよりは我ら人族とも仲良くして欲しい。よろしく頼む」
と二人ともアルハムさんに言ってくれた。アルハムさんも緊張が解れて、二人に今後はどうぞよろしくお願い致しますと頭を下げていた。
良し! コレで俺も肉を食える!!
さあ! 肉祭りじゃーっ!! 食うぞーっ!!
と、その前に、この世界のエールやワインも良いが、俺は
子供たちには果汁100%ジュース各種を出して上げた。うん、レベルが上がって魔力が上がったから出来るゴリ押しだな。
もちろん、領都中にも配って貰うようにルーちゃんにお願いした。
「ええーっ! 私もダーリンと一緒にお肉を焼いて食べようと思ったのにーっ!?」
なんて言いながらも領民の為にすぐさま動くルーちゃんは流石だと思った。
ミノタウロスの極上肉と一緒にウィスキーを流し込む俺! まだまだ食うぞーっ!!
オッサンが授かったジョブは若者には死語でした しょうわな人 @Chou03
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