第41話 ナビゲーターの正体
さーてと、暫く待ってみたけど
「二人とも、お疲れさん。それじゃ、領都に戻ろうか」
俺がそう言うと二人とも頷いて同意したのでショウくんの車を出して乗り込んだ。そして出発しようとした時に車の前に魔法陣が現れ、十人ほどの人が立っていた。
「うわっ! 危ない! 発車するとこだった……」
ショウくんはアクセルから足を離して、直ぐにブレーキに踏みかえたようだ。うん、若いから反射神経がいいな。
取りあえずエンジンをきって表に出る俺たち。よく見ると現れた人たちの頭から角が見える。敵か味方か分からないけど対話を試みる。
「あの、こんな場所に突然に現れたあなた達はどなたでしょうか?」
俺の問いかけに一人の女性が答えた。
「私たちは始竜の森に住んでいた
アルハムさんがそう言う。俺はショウくんとカイリくんを見た。
「公爵から聞いた事があります。森の最奥に住む竜を尊ぶ一族が居ると。彼らは俗世とは関わらずに生き、滅びに向かっているとも言ってました……」
そんな一族が居るのか。俺はアルハムさんに質問してみた。
「あの、人が処刑の森と呼んでる場所の最奥に住んでらしたなら、それなりの力はお持ちだと思うんですけど、そんなあなた達でも勝てないようなヤツが現れたんですか?」
「はい、たった一人でしたが、邪神@?j/の加護を得ている者で、私の結界を容易く破って村に入ってきたかと思うと守護竜たちを殺してまわり、私たちにまで迫ってきたのです。始竜様の思念体が何とか攻撃を逸らして下さらなければ、私たちもここには転移できなかったでしょう…… 始竜様の思念体も深く傷つき、今はこのように石となって傷を癒やしておられます」
思念を傷つける事が出来るって、どうなんだ? そんな厄介なヤツが居るのか。
『マスターが右腕を斬った少年ですね』
ウオ! いきなりだな、ナビゲーター。
『必要だと思いましたので、言葉を発しました』
と、俺とナビゲーターが話をしていたら、アルハムさんに話しかけられた。
「そこの方、あなたから始源竜様の波動を感じます、もしや始源竜様の眷族の方なのでしょうか?」
うん? どういう事? 俺の不思議そうな顔を見てアルハムさんも不思議そうな顔になる。
「あの、もしやご存知ない……? あなたから感じる波動は間違いなく始源竜様のものですが、失礼ながらジョブを教えて頂いても? あ、私のジョブは始竜の
ちゃんと自分のジョブを教えてくれたんだから、俺も応えるべきだろうな。
「俺の
俺がそう答えると、
「士農工商だとっ!?」
「始竜様が仰っていたあの!?」
「始源竜様の加護を得たお方なのか!?」
「冴えないオッサンにしか見えませんが……」
はい!、そこ! 最後の人! 顔は覚えましたからね! まあ、たしかに冴えないオッサンではあるけれども、でも聞こえるように言わなくても…… ちょっと傷ついた……
「あの、本当にジョブが士農工商なのでしょうか? そうなのであれば、我らの導き手となるお方……」
アルハムさんは俺にそう聞いてきたから、これはもう俺も訳が分からないから、困った時の定番を唱えた。
「教えて、ナビえもーん!?」
『はあ〜、仕方ありませんね。
「おおっ!! やはり始源竜様!!」
『静かにお聞きなさい。コチラのオッサンさんは私の加護を得た者です。そして、邪神@?j/を封印ではなく滅ぼす者でもあります』
聞いてないよ、ナビえもーん!?
『これより、あなた達、
「ハイッ!! 始源竜様!!」
あの、だから、聞いてないよ、ナビえもーん!!
『という事です、マスター。私の孫たちをよろしくお願いしますね。ああ、それと始竜、いつまで寝てるのです、いい加減起きなさい! 私と出会った時点で傷は癒えてるでしょう! 惰眠を貪る癖は大人になっても変わってないようですね!』
ナビゲーターがそう言うと何処からともなく現れた小さな
『ギャーッ! 母ちゃん、ゴメーンッ!! 起きる、もう起きるからビリビリは無しでーっ!!』
始竜…… 威厳もクソも無いな……
石が割れて中から実体を伴う小さな竜が現れた。チビだな。
『コラ! そこのオッサン! チビって言うな! お前たちに合わせてこのサイズで顕現してやったんだからなっ!!』
おおう! 俺の思考を読みやがった! 腐っても竜か!?
『腐ってねぇっ!! 母ちゃんの加護を得てるからって、俺が手を出せないって思ってるのかっ!! 痛い目を見せてやる! 喰らえ、
『どうやら、折檻が必要なようですね、私の怒りを知りなさい! 始竜!』
ドドーンッとチビ竜を大きな
『ギャーッ、母ちゃん、ゴメーンッ! もうしない、もうしないから、許してーっ!!』
本当に威厳もクソも無いな…… それにしても頑丈だな、あの雷に撃たれても黒焦げになっただけかよ。
『本来ならば、
いや、しないし…… それよりも、竜だったとはな、ナビゲーター。それも始源の竜とは。竜の始まりであり、
『フフフ、それは秘密です、マスター。けれども、
俺が俺なりに見守る事しか出来ないけど、それでも良いのか?
『はい、それで十分です、マスター』
分かった。それじゃそうするよ。
俺はアルハムさんに向けて言った。
「取りあえず、ここにいつまでも居る訳にもいかないから、移動しましょうか。ちょっと待って下さいね」
俺はそう言うと
俺が出したバスに驚愕している
「分かりました、オッサン。先に出発します」
そして、俺もバスの運転席に乗り込んだ。
『おい、動くのか、コレ? どうやって動いてるんだ?』
チビ竜がうるさい…… 後でなと言うと、
『今、聞いてんだから今、教えろーっ!』
って喚く。が、アルハムさんがチビ竜をガシッと鷲掴みにして言った。
「始竜様…… 大人しくして下さいね、ねっ!」
そうして、始竜は大人しくなった。アルハムさんの最後の【ねっ】に心なしかナビゲーターの気が感じられたのだが……
忘れてなければ、後で聞いてみよう……
こうして、俺は
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