第37話 にく、ニク、肉!(アナイアレイター始動)
教習所での作戦会議には俺は参加せず、ナビゲーターを相手に七人の召喚者について確認をしていた。
『マスター、彼らは昨日の時点でレベルアップをはたしていますが、まだレベル20台です。但し、マスターが腕を切った相手だけはレベル40台になってます。彼だけは召喚された時点でレベルが30台でしたので。そして、マスターが斬った腕も邪神の祝福により生えてます』
ゲッ、両腕揃ってるのか…… こりゃまた俺も気をつけないとヤバいかな?
『そうですね、マスター。彼はどうやら日本の名もなき古流武術を学んでいたようです。そして、自分を教えてくれていた師匠を、その学んだ武術で殺害しています。他の召喚者も似たりよったりですね』
うーん…… 本当に危ない奴なんだな。俺が勝つにはどうしたら良いんだ?
『レベルアップと武士のスキルの熟練度を上げておくべきですね。今からマスターをある場所に転移させます。そこで腕を磨いて貰いましょう。では、早速行きますよ!』
えっ、いや、ちょっと待て! おいっ、コラ、人の話を聞けよ、ナビゲーター!!
こうして俺はナビゲーターによってある場所に転移させられた。そこは俺には天国であり、地獄でもあった…… その話はオークやミノタウロスの殲滅が上手くいって、落ち着いたらしようと思う……
翌朝、転移場所からは前日の夜中に戻ってきていた俺は夜中に辛抱堪らなくなって待っていてくれたミコトを相手に抜かずの八回戦を終えていた。
フッ、朝日が目に染みるぜ……
「ハアハア、○○○、凄い…… でも、もうダメッ、今日は大切な日なんだから…… また、帰ってきてからね、ねっ!」
もう一回戦と思ってミコトの体に手を伸ばしたがそう言われてしまったので、仕方なく諦めた俺。
身支度をパパっと済ませた俺たちは教習所(公爵邸中庭)へと向かった。そこには、何と使用人さんも含めて屋敷内の人の多くが見送りに来てるじゃないか……
「頼みましたよ! 高級肉! 領民たちにも振る舞う予定ですのでっ!!」
「今夜は領地の各広場にて鉄板を用意して待ってますからね!」
「解体もお願いしますっ!」
「
料理長のブッフェさんがミコトに敬礼している。
「皆さん! 今夜は領地内で焼肉パーティーをおこなえる事を私たち
「勿論です!
「よろしい! それでこそ私の一番弟子だわっ! 私が戻ったら貴方が総料理長よっ!!」
「グッ、グランシェフッ!? わ、私がですかっ? しかし……」
「そうよ、ブッフェ。私の教えを忠実に守りながらも、自分なりの工夫を忘れなかった貴方ならばもう大丈夫よ! 自信を持ちなさい!!」
「イエス!! マム!!」
こうして、スティーブさんの運転する車にモアル様が乗り、ショウくんが運転する車に俺とカイリくんが乗り込み肉狩りをスタートした。アナイアレイターである女性たちは車の後ろについてきてもらう。排気量の大きいバイクの重低音が頼もしい。
ルーちゃんの偵察により、領都から五キロ離れた地点でオーク、ミノタウロス、他にも釣られて逃げ出した
領都の門を出た途端にエンジンをふかし次々と車を抜いていくバイク…… もう、本当に見た目はレディースだよな…… 主婦が多いのはともかくとして。
ショウくんは、
「マリア、ま、待つんだ! 危険だっ!」
とブツブツ言いながら懸命にアクセルを踏むが、ミコトの
しかし、あんな短期間で良くみんな恐れもせずに二百キロ以上出せるな……
って、そうだった。女性たちが着てるあのレザーのバイクツナギやヘルメットは耐衝撃百%だったよ。バイクから飛んで落ちてもダメージゼロだったよ。
それに、バイク自体から結界が出てるから外からの攻撃も防ぐしなぁ……
そんなこんなで、えっちらおっちら俺たちが現場に着いた時には既に魔物、魔獣の六割が倒れ伏し、三名がミコト直伝の解体技で恐ろしい速さで解体していた。他の人は殲滅をしているが、三名は一人で二十体を解体したらバイクに跨り交代しているようだ。
「自分たちの出番は無さそうっすね……」
カイリくんがサクラちゃんを目で追いながらそう言った。ショウくんも、
「俺たちが本当に英雄なのか…… 実は彼女たちこそが英雄なのでは……」
と遠い目でそう独り言を語っていた。
そして、俺たちよりも遅れて到着したモアルさんとスティーブさんは目の前の光景に何も言葉が出てこないようだ……
「オッさん! 解体済みの肉をアイテムボックスに入れてちょうだい!」
我が妻からの指示に俺は従った。
結局、
必ず美味しく頂くぞ、食材を無駄にはしないからな、成仏してくれよ。俺は心でそう思いながら、アイテムボックスに解体済みの肉を入れていった。
そんな中、マリアちゃんと、ヘレナちゃんが何と牙牛の雌雄を六体ずつと、
牙牛はその恐ろしそうな牙を自ら差し出してきてミコトによって痛く無いように斬られている。
ああ、こうして魔獣が
「オッさん、終わったわ。第二波はいつ頃かしら?」
はい? 第二波って、ミコトよ何を言ってるんだ?
「だって
あ、ああそういう事か。ナビゲーター、どうかな? 七人の召喚者に追われて逃げてきたから第二波もあるのかな?
『マスター、ミコトさん、第二波はありません。今回はこれで氾濫は治まったようです』
ナビゲーターの言葉にチッと舌打ちするミコト…… 止めなさい、人前で舌打ちなんて。俺だけならまだしも他にも人が居るんだからな。
「はい、ゴメンなさい、オッさん。でも、お肉、足りるかしら?」
いや、十分に足りるよ、絶対に。領都全部で四千六百人だよ。
足りなかったら可怪しいだろ。
「そう、足りるわよね。アナイアレイターの初陣だったからもしもって思ってしまって」
「絶対に大丈夫だよ、ミコト」
そうして大量のお肉をゲットしたみんなを先に返して、俺とショウくん、カイリくんだけがその場に残った。
『マスター、それではショウさんとカイリさんにもあの転移を体験して貰いますね。それでレベルアップして貰います。明日には彼らがこの辺りまで偵察を兼ねてやって来ますので、急ぎましょう』
本当にどうして分かるのか教えて欲しいのだが、ナビゲーターよ。いや、いい、【超】優秀たからだよな。
「オッサン、あの転移っていうのは何ですか?」
ショウくんから聞かれた俺は二人に説明をした。
「カイリくんは剣帝だったよな。それなら西洋で有名な剣豪の元に飛ばされ、その剣豪の弟子になる。ショウくんは
俺の説明を聞いた瞬間に、
「えっ!? 何っすか、ソレ!?」
「いやっ、説明になってないですよね!?」
二人がそう言い残してその場から消えた。
うん、明日の早朝には二人とも大きく成長している事だろう。多分だけど…… 俺がそうだったように……
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